今はたしかに新日本プロレスブームかもしれない。
昭和プロレスファンの僕が見ても、試合のレベルは高い。技も高度でサーカスのような動きもあり、スピードも速い。
だが、何かが足りない。良い試合はたしかに多いが、なぜか記憶に残らない。自分の中での全日本プロレスのベストバウトの一つ、「ファンクス 対 ブッチャー、シーク」。
試合の攻防も実況のセリフも覚えている。今のプロレスファンが、このカードを見たらどう思うだろう?
テリー・ファンク、ドリー・ファンク・ジュニア VS アブドーラ・ザ・ブッチャー、ザ・シーク
1977年、僕が当時9歳の頃だ。この試合はリアルタイムでは見ていない。それからビデオデッキが普及した10年後に試合のビデオをかりて見た。やはりプロレスは外国人レスラーの存在が重要だ。
ザ・ファンクスとブッチャー、シーク
オープン選手権というタッグリーグの公式戦、勝ったほうが優勝だ。当時、日本では絶対的なベビーフェース(善玉)の兄弟コンビ「ザ・ファンクス」。一方、対戦相手の「ブッチャー、シーク」は最強最悪コンビのヒール(悪玉)だ。
まさに兄弟愛のチームと世界最強ヒールチームの対決だ。ファンクスは先に入場し、ブッチャー組をリングで待つが、シークがリングインしたと同時にテリーの先制パンチ攻撃、ドリーもブッチャーにパンチを打つ。
シークはガウンを被ったままテリーの猛攻にサンドバッグ状態、波乱の幕開けに観衆は興奮の坩堝、4人の乱闘の中ゴングが鳴る!
ラフファイトの応酬
テリーの猛攻でシークはもう流血する。ブッチャー、シークとも場外へエスケープするが、またリングインすると同時に4人の乱闘が繰り広げられる。今度はテリーのターゲットはブッチャーになり、ヘッドバット攻撃。
ドリーはシークを首絞め攻撃。どっちが悪役なのかわからない攻撃だ。本来、ファンクスはアメリカでは、ヒールだったので本領発揮かもしれない。試合はラフファイトの応酬で入り乱れる4人が続くが、極悪コンビも負けてはいない、テリーのパンチをかわした、ブッチャーは空手のパフォーマンスからの地獄突きにテリーは悶絶。
ようやくブッチャーとテリーがコーナーに戻り、やっと試合の形になる。
大流血の残酷シーン
リング上はドリーとシークの攻防だ。ドリーは伝家の宝刀、スピニングトーホールドで勝負に出るが、ブッチャーがまたも地獄突き。
今度はドリーとブッチャーの対戦だ。空手殺法のブッチャーがドリーを痛みつけていく。ブッチャーの一つ一つの攻撃に観衆から悲鳴が上がる。リング内はテリーとシークに代わり、シークはなんとフォークでテリーの右腕をめった突きにする。
もちろん右腕は大流血。今なら絶対放送できない残酷シーンだ。シークはブッチャーに代わりフォーク攻撃が続けられる。ドリーのカットもレフェリーに制止され、観客から物も飛ぶ。
しかし大流血のテリーも必死のパンチで反撃し、凶器のフォークも手から離れた。ここでドリーとタッチしリングイン。館内は大歓声でドリーを迎える。ハッスルするドリーの攻撃にブッチャー、シークも防戦一方。
「テリーが行ったー!」
しかし最悪コンビは二人がかりの反則攻撃でドリーを痛みつける。そして、試合のクライマックスを迎える。応急処置をしたテリーがリングイン。昭和プロレスファンならみんな知ってる実況「テリーが行ったー!」。
ブッチャー、シークに左のパンチ攻撃、パンチラッシュのテキサスブロンコ・テリーファンク。最高のシーンだ。会場内は大興奮、二人をボコボコにするテリー。そして最後はシークがレフェリーに凶器攻撃し、ゴングが鳴った。ファンクスの反則勝ちで優勝し、座布団が舞った。
テキサスブロンコ魂を見て欲しい
今のプロレスファンだと反則決着だとブーイング、もしくは金返せコールが起きるかもしれない。
しかし、この試合は違う。技らしい技も少なく、殴る、凶器の連続。そして「テリーがいったー!」に涙。今後このような試合は2度と見ることがないだろう。令和のプロレスファンも機会があれば見てほしい、テキサスブロンコ魂を。
(文・GO)