私のいた大学レスリング部では部員が50人いて一回のマット練習は2時間半程やっていました。
準備運動から打ち込み、軽い取り合い、グランドスパーリング、普通のスパーリング、補強といった流れです。
これを毎日午後17:00~19:30まで、メニューが変わることもなく、スパーリングの相手もそんなに変わることなくやっていました。正直長いし飽きます。
飽きると、集中力が続かずにどこかで惰性の練習をしてしまい。肉体的な疲労はあり、それが充実感になると錯覚を起こしますが、自信には繋がりません。試合で勝つための練習というより練習のための練習になってしまっていたと思います。
レスリング強豪校への出稽古経験
そんな中、学校が校内点検のために一週間閉鎖することになり、出稽古に行くこととなりました。
以前から興味のある大学があったのですが、そこは自分達の半分にも満たない数の部員であり、設備も整ってるとは言えない環境でした。
しかしながら成績は前年のインカレでは入賞者が多数と全体の成績が良かったのでどんな練習をやっているのか気になっていました。
学校が閉鎖している間、その大学に行くこととなりました。その一週間は自分のレスリング人生の中で最も濃く大きな転機となりました。
考えて練習することの大切さ
練習内容は全体的に普段自分の所属でやっている練習とさほど変わらず、準備運動、打ち込み、取り合い、スパーリングなどなどでした。
しかし、かけている時間と一つ一つの取り組みがまるで違いました。まず練習の合計時間が1時間半程で、打ち込みに関してはダラダラとやるのではなく試合を想定して色々なパターンをやります。
自分の得意な状態で必ず取り切ると決めた技や、苦手なポジションを克服しようと追い込まれた状態で逃げる体勢など、全員が頭に入れながらやっていたのが印象的でした。
その後のスパーリングは打ち込みの技術をイメージして行うので効率よく技術が向上した気がしました。スパーリング終了後もその日の反省も込めての技術練習をやるので、できないことを次の日に持ち越さずにその日のうちに出来るだけ解消するようにします。
残りの時間は、新しい技や自分の得意な展開の技術の練習に当てることでき、次々と引き出しが増えていくことが強さに繋がっているんだと勉強になりました。
考えて動くことの成果は?
出稽古での一週間を終えて所属に帰ってからの練習で意識したことは「考えて動くこと」だけでした。
いかに今まで自分が考えないで練習を積んでいたのか、よく言えば質より量という古い考え方になっていたのでしょう。
そこからは一つの練習の時間をどう有効活用すれば良いのかという思考になり、試合での成績もついてきました。
考えていた内容とは、序盤は相手にプレッシャーをかけて前に出て行こう、その時に反発してきた力を利用して崩して行こう、そこで反発がなかった場合は脇を刺して技を仕掛けて点数を取ってやろう、など他にもありますがこのようなことです。
やるべきことが分かっていると不思議と緊張も少なく、力んでない状態で試合に臨むことで相乗効果でいい動きができます。
残り時間が少なく点数が負けている時など窮地に立たされた場合、テンパって技を仕掛けてもかかるはずがなく負けてしまいます。やるべきことが分かっていると頭がクリーンな状態なので落ち着いて戦うことができ逆転勝ちも増えていきました。
私が出稽古経験を通して思ったのは、考え方ひとつで変われるということです。確かに、環境や練習パートナーは良いに越したことはありませんが、何より自分が何を目指すか、どうなりたいかというスタンスで練習を重ねることで理想に近づいていくことができます。
今になって思うことはもっと早い段階で考える習慣を身につけていたら、よりレスリングを楽しんでプレーすることができただろうということです。「レスリングを通して人間的に成長する」と、高校、大学の時によく先生方が仰っていたのはまさにこのようなことだと納得できました。
(文・ロマトント)