実戦的な攻防を実験する西洋剣術と日本剣術が戦ったら?

「吾輩は石動雷十太!!

日本剣術の行く末を真に憂う者である!」

剣豪マンガ「るろうに剣心」に出てきた敵役のひとり、石動雷十太(いするぎ らいじゅうた)の名言です。

石動雷十太は幕末の動乱も終わり平和ボケした世情を受けて形骸化していく日本剣術を憂い、忘れられていく各地の古流剣術を統合して真に実戦的な剣術流派「真古流(しんこりゅう)」として後世に伝えようと尽力しました。

当時中学生だった私は石動雷十太先生の影響で剣道部に入部しました。

入部のきっかけがこのようなものだったので、剣道に対して、「これは日本刀を操るための技術とは別物だよな」と思わずにはいられませんでした。

実際に武器を持ってガチで戦ったらどんな動きになるんだろう?

このような疑問をずっと抱いていました。

あるときユーチューブを見ていると、実践の剣術とはこのようなものだろうか、と思える動画に出会いました。

西洋剣術の実戦的な攻防とは

その動画では、リングの上で甲冑を着て盾と剣を持った外人ふたりが真剣勝負をしていました。

あとで似たような動画をたくさん観たのですが、動きのキレや間合い感覚など、‪Evgeniy Bedenko とIvan Vasilevが1番参考になりました。盾剣の自由組手の攻防で1番ハイレベルのように感じられました。‬

‪日本には黒田鉄山など凄い動きをする剣術家はいますが、それはあくまで型動作、実際に自由に動く相手に技を掛けられるかは未知数です。‬

‪しかし‪Evgeniy Bedenko とIvan Vasilevの2人は自在に剣を操り、お互いに駆け引きや攻防を行っていました。古代ローマの剣闘士の試合はきっとこのようなものなのだろうと思いました。‬

総合格闘技を取り入れた西洋剣術

‪この試合で私が特に注目したポイントは前手の使い方です。盾剣なので前の手には盾を装備しているのですが、両者ともジャブや飛び込みながらのフックなど、伝統的な西洋剣術の型にはみられないような多彩なシールドバッシュを行なっていました。‬
‪ ‬
‪さらに斬撃から組討に至る過程に総合格闘技の技術が見て取れ、繋ぎがとてもスムーズ。これはもはや西洋剣術の再現ではなく、現在ある技術を取り入れ再構成した21世紀最新の剣術と言えます。‬

日本剣術と西洋剣術はどっちが強い?

私は武器術は剣道とシラットはかじったことがありますが、剣術はやったことありません。なので話半分で読んでください。‬

やはり気になるのは、進化した西洋剣術と日本の剣術、どっちが強いのかではないでしょうか?‬

この問題について考えるには、まず前提条件を整理しておく必要があるでしょう。

‪日本剣術にはたくさんの流派がありますが、大きく分けて、

  • 介者剣法
  • 素肌剣法

の2つがあります。

介者剣法とは甲冑を着込んだ状態で戦う剣術の技術カテゴリのことです。‬

‪当時の日本の甲冑は肩周りの可動域が狭く、大きく振りかぶることができないためか防具の隙間や金的に刃を差し入れるか、接近して組討に持ち込む戦法がメインだったそうです。‬

‪しかし乱戦用のそんな不自由な甲冑で、進化した西洋剣術の相手をしたのでは不公平です。

‪条件を公平にするために、素肌剣法の方に西洋剣術の選手たちが着ていた鎧を装着してもらい、戦った方が良い勝負になりそうです。‬

次に判定方法ですが、日本剣術の大体の技法は「触れれば切れる日本刀」という前提の上に成り立っているので、日本刀が当たったら勝ちの一本勝負を採用してもらいたいところです。

もし、このようなルールに黒田鉄山が参戦したなら?

‪これは私の想像になりますが、西洋剣術家の初撃にスルリと合わせて袈裟に斬ってくれるのではないかと考えます。‬

日本でも、甲冑を着てリング上で戦う剣術のイベントが普及すれば、そんな勝負が見られる日が来るかもしれません。

(文・千里三月記)