2017年、新生K-1発足から3年が経ち、武尊や武井などの軽量級中心に盛り上がりを見せていた時代。
新生K-1には重量級の試合が組まれることはほとんどなかった。重量級での日本人層が希薄だったこと、GLORYという海外立ち技プロモーターに旧K-1所属選手を含んだ外国人選手が取り込まれていたことも逆風だったのではないかと思う。
新生K-1のヘビー級トーナメント
その時期、新生K-1には日本人選手を中心に団体として強めていきたい姿勢が見えた。私は旧K-1のような重量級外国人選手同士の迫力ある試合をまたみたいと思っていた。
そのような中である日本人ヘビー級選手がトーナメントを提案したことをきっかけに新生K-1初のヘビー級トーナメントが開催された。
トーナメントには8人制度で行われ、日本人4人+外国人4人だったが2回戦で敗退した日本人以外は1回戦にて敗北。皮肉にも日本人は全員KOされた。
アントニオ・プラチバットvsイブラヒム・エルボウ二の決勝戦
2018年K-1ヘビー級トーナメント決勝戦、アントニオ・プラチバットvsイブラヒム・エルボウ二の試合は旧K-1ヘビー級を彷彿とさせる迫力だった。
アントニオ・プラチバットはミルコクロコップと同じクロアチア出身の身長196cm、なんと、K-1初代ヘビー級王者のブランコシカティックを師に持つ。
対するイブラヒム・エルボウ二はバダハリ、メルヴィンマヌーフらは輩出したマイクスジム所属の身長192cm。互いに20代という若き新鋭2人がいずれもKO勝ちで決勝までコマを進めた。
互いにボクシングを得意とし、スタミナ、打撃のバランスのプラチバット、パワーとスピードのエルボウ二の打撃戦が想像された。
1R、はやくもヘビー級の打ち合いに
両者間合いを詰めて早くも近い距離でのボクシングが繰り広げられた。
プラチバットがじりじりと前に出ていく。開始40秒でプラチバットの近距離でのカウンターの左がエルボウ二の顔面を捉えた。
エルボウ二はたまらずクリンチ。続けてプラチバットは前に詰めてパンチを放ち、エルボウ二はカウンターで返していく。互いに良いパンチが入るが一歩も引かない外国人のタフさが出ている。
残り時間1分、コーナーに詰まったエルボウ二にプラチバットの放った左のボディブローが炸裂する。クリンチで逃げるエルボウ二だが明らかにボディが効いている様子だ。
残り20秒、今度はエルボウ二のフックがプラチバットのテンプルを捉え、たまらずプラチバットは腰が崩れ落ちるも、なんとか踏ん張りダウンにはならず。一気に距離を詰めるエルボウ二だが、ここで1R終了のゴングが鳴った。
2R、ボディフックでスタミナを削るプラチバット
両者近い距離での打撃戦からスタート。
プラチバットの顔面が腫れてきているのが目立つ。互いにカウンターのフックが顔面に何発か入る。中盤からプラチバットがまたもジリジリと前に出てくる。
エルボウ二も足を使い打撃を打つも、打撃にスピードがなくなってきている。プラチバットのボディフックが何発かエルボウ二を捉えている。エルボウ二のスタミナがかなり削られている様子もうかがえる。プラチバットのプレッシャーが目立つ第2Rとなった。
3R、プラチバットが有効打を当てる
プラチバットはエルボウ二のボディを狙い、嫌がったところで顔面への攻撃をしていく。
プラチバット優勢で試合が流れると思いきや、プラチバットが放つワンツーをスウェーで交わしたエルボウ二のボディへの膝が炸裂。
プラチバットが嫌がり、後退したところにエルボウ二が反撃開始。苦しい様子のプラチバットだが打撃で応戦し、互いに詰め合う場面が多くみられる。
このままいくと延長戦に突入するようにも見えた。が、残り1分を切ったところでプラチバットがエルボウ二の顔面へ有効打を当て始め、エルボウ二が後退し始める。
エルボウ二はボディへのダメージによるスタミナ切れで攻撃が出なくなっている。次第にエルボウ二のクリンチも目立ってくる。立っていることがギリギリの状態だ。
詰めるプラチバットがクリンチするエルボウ二に強引に打撃を見舞うところで終了のゴング。結果は判定3-0でプラチバットの勝利となった。
旧K-1時代のヘビー級の迫力
この試合は旧K-1時代を彷彿させる1戦であった。
近年の軽量級中心のK-1から目覚めさせられるような瞬間だったと言える。新生K-1には軽量級中心の魅力も勿論あるが、ヘビー級の迫力は緊張感が違う。
解説の魔裟斗も「贅沢なものを見た」と唸っていた。私も同様の気持ちだった。
日本人ヘビー級ファイターにとって課題となった大会ではあったものの、原点のK-1の空気を思い出させる、ヘビー級の魅力を感じられる大会だった。
(文・Totty)