タイガーマスクとかみ合う!ブラックマンのルチャリブレ

プロレス初心者からマニア化していった僕はまず、プロレスの情報を収集していった。当時はネットもない時代なので、月刊プロレス、月刊ゴング、別冊ゴングなどの月刊誌、そして駅で発売していた週刊ファイトだった。

中学生の頃の僕は、やはり覆面レスラーに興味を持った。特にプロレスラー百科などで、メキシコのプロレスラーに興味を持ち、身長体重やマスクの柄などをノートに記入していた。

もちろんミル・マスカラスはNO.1だがライバル団体の全日本プロレスに参加していたため、タイガーマスクとの対戦は難しく、僕はビジュアル的にブラックマンに注目した。

新日本プロレスにブラックマン登場!

初代タイガーマスクが登場して1年近く経つ。その活躍は世界にしれわたりたくさんの刺客が訪れた。

特に軽量大国メキシコからは、ビジャーノⅢ、スコルピオ、エル・ソリタリオ、エル・カネック、ボビー・リー、エル・ソラール、そして仮面忍者ブラックマンである。UWA世界ライト級を3年以上、69回の防衛記録を持つ強者だ。

まさしく黒忍者。そのブラックマンが新日本プロレスに登場した、中2の春だった。

タイガーマスクvsブラックマン

ブラックマンが後楽園ホールに現れた。雑誌で見た通りの黒装束だ。ホワイトのラインや、雫のようなマークが目、胸、腕に書かれている。

リング上でタイガーマスクと向かい合うと、まるでアニメのような雰囲気だ。どちらも格好いい。

ダイナマイトキッドの試合ような殺伐とした雰囲気もなく。純粋にワクワクし、ゴングが鳴った。

ブラックマンが見せたルチャリブレの動き

メキシコの選手だからと言って、いきなり空中殺法を出すわけではない。タイガーマスクとグラウンドの攻防だ。日本の選手に見られないメキシコプロレス、いわゆる「ルチャリブレ」の動きである。

ブラックマンはタイガーマスクに負けない立体的な動きも見せ、スピーディーな展開だ。見たこともない、リストを決めたままのアームホイップに場内から歓声が上がった。

タイガーマスクのヘッドシザースに対しては、倒立して、ブリッヂを効かせて反動で脱出するトッリキーな動きも見せる。

タイガーマスクも猪木張りのリバースインディアンデスロック、チキンウイング、ボーアンドアローなどで攻め立てるが、ブラックマンも柔軟だ。ゴムまりのような柔らかさでギブアップは奪えない。

タイガーマスクとかみ合ったブラックマン

ブラックマンはローリングからのヘッドバッドでタイガーマスクを場外に落とすと、日本初公開の大技、トぺコンヒーローだ。リング内から助走をつけ、前転しながら場外へ飛んで行く。とにかく一つ一つの動きが早い。

だがタイガーマスクも負けてはいない、プランチャーにフライングクロスアタック、サマーソルトドロップ。素晴らしい好試合だ。メキシコの選手でこれほどタイガーマスクと動きがかみ合った選手ははじめてだった。

反則もみられず、まさしくクリーンな試合だ。そして12分、最後はタイガーマスクの原爆固めで幕は閉じた。試合後の両選手の握手、抱擁に拍手が起きる。タイガーマスクの目を見ると、とても満足そうな笑顔が見られた。ありがとう、ブラックマンと言える試合だった。

それからも、タイガーマスクにはメキシコ以外もアメリカやヨーロッパからたくさんの刺客が現れた。

たとえばメキシコからは実力差がありすぎて、動きについていけなかったウルトラマン、のちに世界チャンピオンになるブレット・ハート、ヨーロッパから強豪スティーブ・ライト、暗闇の虎ブラックタイガー、因縁のライバル小林邦明、最後の対戦相手寺西勇…たくさんの素晴らしい試合があったが、ブラックマン戦のような、清涼感のある試合はなかった。

それくらいさわやかな対戦であった。できれば、タイガーマスク、ブラックマンのタッグチームを見たかったなと思う。

(文・GO)

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