90’スーパーファイトin闘強導夢はまさしく、オールスター戦であった。目玉だったリック・フレアーの参加が急遽中止になると、なんとライバル団体の全日本プロレスが、主力選手を貸し出してくれた。
鶴田、天龍、タイガー、谷津、ハンセンだ。馬場と坂口の信頼関係によって成立した。プロレス歴10年の僕は飛び跳ねて喜んだが、やはり大人の世界である。テレビ放送はハンセンとベイダーの試合だけであった。
しかし、正直、リック・フレアーの参戦よりずっとワクワクするカードだ。この大会では、2019年にひっそりと死去された北尾のデビュー戦。そして猪木の「イチ、ニ、サン、ダ―!」が初めて行われた日であった。
新日本・全日本のエース外国人対決
90年代、新日本プロレス、全日本プロレスの二つの流れがあり、どちらの団体にもエースの外国人選手がいた。
新日本では「皇帝戦士ビッグバン・ベイダー」、全日本では「浮沈艦スタン・ハンセン」である。その両雄が対決した。
ハンセンは新日本には8年ぶりの凱旋であったため、新旧の新日本プロレスの外国人エース対決でもあった。その両雄が、新日本プロレスの象徴IWGPヘビー級のベルトを賭けて激突する。
ビッグバン・ベイダーvsスタン・ハンセン
スタン・ハンセンが先に入場しもうすでにエンジン全開である。
チャンピオン、ビッグバン・ベイダーも甲冑を肩に乗せ臨戦態勢で入場する。リングインと同時に両選手が組み合いゴングだ!
これは巨大恐竜の対決か。実況解説になぜか田代まさしがいた。新日対全日のイデオロギーが衝突した。パンチ、キック、エルボー、チョップで両選手が衝突する。
パワーのハンセンもベイダーの逆ラリアットには顔をしかめる。屈辱的な攻撃だ。
スタン・ハンセンのエルボー攻撃
ハンセンはエルボーで反撃。全日系の試合はやはりエルボーが多い。ベイダーはハンセンのラリアット封じのため左腕攻撃に絞ってきた。左腕を脇固めに決めるところはまさしく、新日系の攻撃だ。さすがはベイダー。
ハンセンはパンチにエルボーでベイダーの顔面を攻撃する。クリーンヒットが続き、ベイダーの様子がおかしい。自らマスクをはずしてしまう。ベイダーの右目が大きく腫れあがっている。会場内に「おおー」と歓声が沸く。
ハンセンの攻撃は続く、顔面パンチにキック、ベイダーの巨体をバックドロップで吹き飛ばす。ベイダーは場外転落しさらに鉄柱に激突。
ビッグバン・ベイダーの反撃
ベイダーも負けてはいない、脇腹へのフェンス攻撃やラリアットでハンセンをKOする。なんとなく場外両者リングアウトかなと思われたが、両選手リングインし会場内は大歓声。
世紀の対決がこんなところで終わったらつまらない。ベイダーのペースで試合が続く、ハンセンの左腕や脇腹に攻撃を集中する。途中、再度場外に両選手が転落するが再びリングインして拍手が起きる。
ベイダーの猛攻は続き、ビックバンクラッシュやトップロープからのタックルでハンセンを圧殺する。ハンセンの脇腹のダメージがひどく骨が折れてるようにも見えるが容赦せず、パンチにエルボーを繰り返す。
ラフファイトの攻防が続く、お互いのプライドをかけた名勝負だ。
ベイダー、ハンセンのベストバウトの結末は?
徐々にハンセンもペースを取り戻しクライマックスが来た。ハンセンが左腕のサポーターを直し腕を上げる。伝家の宝刀ウエスタンラリアットだ!
ロープにベイダーを振るハンセンだが、間一髪ドロップキックで吹き飛ばされる。そして先にベイダーのラリアットが火を噴いた。次の瞬間ハンセンのラリアットも火を噴いた。両選手が場外へ転落する。
フェンスを越えての大乱闘。もう収拾がつかない状態だ。ここでゴングがなり会場内から落胆の声が上がった。しかし死力を尽くした両選手。ベイダー、ハンセンのベストバウトは両選手リングアウトながらベイダーの防衛で終わった。
素晴らしい試合だったが令和2年の今、改めて見てみると、田代まさしの解説が新鮮だった。試合後、「残念でしたね。最後は中で決着を付けてほしい」ともっともなコメントだが、後年、薬を繰り返し当人が中で決着してしまったことを思うと複雑である。
(文・GO)