新日本プロレスにジャンボ鶴田が参戦!U系vs全日本で盛り上がる

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昭和のプロレスには、ジャイアント馬場とアントニオ猪木の二つの流れがあった。どちらとも交わることのない流れだ。

二人の確執、関係は本人たちにしかわからない。猪木の新日本、馬場の全日本は独自のプロレスを確立していた。攻撃的な新日本、鎖国路線の全日本、その中で、全日本的なプロレスを象徴するレスラーがジャンボ鶴田だ。

猪木の新日本プロレスの対極に位置するのが、ジャンボ鶴田のレスリングだ。新日本が100メートル全力疾走だとするなら、ジャンボ鶴田はマイペースな散歩のようであった。

全日本と新日本の間にあった、まるでベルリンの壁のような強固な隔たりの隙間から、ジャンボ鶴田が一度だけ新日本プロレスに登場した。

新日本プロレスに参戦したジャンボ鶴田

1990年当時、プロレスマニア歴10年の僕はアントニオ猪木が率いる新日本プロレスに陶酔していた。

その分全日本プロレスを1ランク下に見ていた。外国人レスラーは充実していたが、日本人レスラーは全員、腹がたるんでいた。練習不足のイメージで全日本プロレスを見ていた。

その全日本の象徴、ジャンボ鶴田が新日本プロレスに登場した。新日本プロレスでは社長が猪木から坂口征二に変わっていた。猪木の政界進出等の理由からだ。

馬場は坂口とは良い関係を保つことが出来、ちょっとだけ、ベルリンの壁に隙間が出来た。そして鶴田が登場した。

木村健吾・木戸修vs谷津義昭・ジャンボ鶴田

新日本プロレスからは中堅の木村健吾、U系の流れを持つ木戸修。ある意味新日本らしい選手であった。

一方、全日本プロレスからは元新日の谷津義昭とジャンボ鶴田。こうして見ると鶴田以外は新鮮味にかける組み合わせだ。

しかし、黒船の鶴田が登場するだけで会場はブーイングどころか鶴田コールで迎えられ大興奮。全員、黒のショートタイツ。まさしく日本人の純プロレスだ。

開始と同時に新日本コンビはターゲットを鶴田にしぼり二人がかりで攻撃だ。木村の稲妻レッグラリアット、パンチ攻撃、そして木戸とタッチ。木戸も小さな体ながら鶴田に挑むがニーパッドで吹っ飛ばされる。鶴田の「オー」が出た。

とうとう新日本プロレスで「オー」が出た。場内は大歓声。そして谷津が登場し、木戸対谷津、木村対谷津。新日本プロレスらしい攻防で安心して見ていられる。

U系vs全日本の図式で盛り上がる

違和感もなく上手いレスリングが続く。そして鶴田の2度目の登場。鶴田対木戸で一気に会場が盛り上がる。異質な二人の対決だ。鶴田のハイキックが出た。ジャイアント馬場の16文キックを彷彿させる。

木戸も負けていない。手四つの体勢から伝家の宝刀、脇固めに決める。鶴田が脇固めを食らった。U対全日の対決に異常な興奮の東京ドームだ。木戸の眼光の鋭さ、鶴田の苦悶の表情でロープブレイク。鶴田は得意のキチンシンクで逆襲し谷津と交代。

谷津はフロントスープレックスやサソリ固め、木戸はサソリ固めを返し、アキレス腱固め、素晴らしい攻防が続く。

一方木村も格闘技スタイルで谷津を攻める、特にパンチの切れがいい。そして3度目の鶴田の登場で、伝家の宝刀バックドロップが木村に火を噴いた。

が、鶴田のバックドロップは普段全日で使われている、へそで投げるバックドロップではなく、受け身の取りやすいように足を持ち上げたバックドロップであった。

ジャンボ鶴田の横綱相撲

鶴田のバックドロップは危険なため、受け身のとりやすい投げ方に切り替えていた。さすがは鶴田、余裕の試合展開に僕は敬服してしまった。役者が違う、まさしくジャンボだ。

そして残りの3選手も素晴らしい。持ち味を十二分に発揮し、多彩な技の展開だ。一進一退の攻防の末にクライマックスが来た。やはり鶴田と木戸の攻防だ。勝負をかける、ジャンボラリアット!

決まったと思われた瞬間、大逆転の脇固め! 腕をぐいぐい絞める。この日の東京ドームでの最大の盛り上がりと言っても良い。鶴田は必死にロープブレイクしたが、再度木戸も脇固めで食らいつく。

興奮の坩堝の6万人! 谷津のカットで間一髪逃れる鶴田。木戸の猛攻が続き、勝負をかけた空中胴締め落としだ。その瞬間鶴田は木戸の首をロープに叩きつけ、逆に胴締め落としで叩き潰す。鶴田の完勝であった。

初めての黒船登場は鶴田の横綱相撲でありながら、素晴らしい試合だった。そして僕にジャンボ鶴田の実力を認めさせた試合だった。

隔たりがあるからこそ成立する新鮮なカード

ジャンボ鶴田が生涯、新日本プロレスで試合を行ったのはこの1試合だけだった。その後鶴田は病に侵され若くしてこの世を去ってしまう。本当にスケールの大きいレスラーだった。まさしくジャンボだった。

現在のプロレス界はベルリンの壁も崩壊し、他団体時代に突入している。そのため、「こんな対戦が成り立つなんて!」という新鮮なカードもない。今後2度とあのような試合は見られないだろう。

(文・GO)