僕もプロレスを見て約40年、初代タイガーマスクに夢中になり現在に至る。
現代はネット動画などで、数多くの過去の映像も見ることが出来る。中でも僕が一番、お気に入りの団体は国際プロレスだ。
今、しみじみ見ると地味ながらレベルの高さや独特な雰囲気に味がある。令和の時代なら潰れなかったような気がする。
1981年に崩壊した国際プロレス
国際プロレスは1981年に解散した。当時はジャイアント馬場の全日本、アントニオ猪木の新日本、そして国際プロレスの3団体時代だった。2団体には興行成績では勝てるわけもなかった。
世間はコロナ対策で外出自粛。僕も自宅にいる機会が増えた。そこでネットでのプロレス観戦だ。
とにかく国際プロレスの試合を数多く観戦した。その中でも究極のB級グルメのような試合が、木村対フェゴ戦。国際プロレスが倒産する3カ月前の最後のテレビ中継のカードだ。
ラッシャー木村vsティエラ・ビエント・イ・フェゴの攻防
国際プロレスのエース、ラッシャー木村、対する若手の大型メキシカンのフェゴ。「フェゴ」なんてレスラーはよほどのファンでなければ知らないだろう。
テレビ中継最後の対戦カードが「木村対フェゴ戦」とは本当に哀愁を感じる。薄暗い会場、木村の渋い入場テーマが鳴り響き、同時に二人が入場した。
フェゴのテーマはなかった。フェゴはゼブラのような変わったマスク、コスチュームだ。一方、木村は力道山張りの黒のロングタイツで好対照となっている。
ゴングが鳴った…と同時に木村がドロップキックの二連発。いきなりフェゴは場外転落。フェゴの先制攻撃ならわかるが、意表をつかれフェゴもびっくり。
リングインするフェゴに木村はチョップ攻撃で再度転落。ドタバタした展開だ、フェゴも木村の動きについていけない様子。
リングインしたフェゴをロープに叩きつけ、またも場外転落のフェゴ。また、落ち方も危険。ふらつくフェゴ。あまりよい選手とはいえなさそうだ。こんな選手でも一生懸命、試合を成立させる木村の忍耐強さが素晴らしい。
木村のブレーンバスター、パイルドライバー、逆エビ固め
フェゴの張り手攻撃を受ける木村、結局フェゴの攻撃はチョップくらいしかなかった。木村のチョップやキック、ヘッドバットで倒されるが、受け身も今一つのフェゴ。
クロスチョップや水平チョップでまたも場外転落するフェゴ。落ち方も危ない。唯一の見せ場の場外戦だが、フェゴは本部席に叩きつけられた。
この後は木村のフルコース、ブレーンバスター、パイルドライバー、そして「コ」の字に逆エビ固めを決められギブアップ。さらに木村にマスクを脱がされるフェゴ。こうして、国際プロレスの最後のテレビ放送が終わった。あまりにも寂しい終焉だった。
国際プロレスに感じたノスタルジー
哀愁の国際プロレス。今、改めて見ると現在のプロレスとは明らかに空気が違う。
なんだろうな昭和の田舎のお祭り、レジャーランド、薄暗い駄菓子屋…そんなノスタルジーを感じる。
どの国際プロレスの試合も独特の味わいがある。それでいて、ところどころレベルの高さも見せつける。令和の時代ではありえない、胡散臭さのフェゴ。
ティエラ・ビエント・イ・フェゴのリングネームには「大地、風、炎」という意味があり、風林火山仮面とも呼ばれたのだとか。
(文・GO)