マジソンスクエアガーデンに登場!タイガーマスクvsダイナマイトキッド

タイガーマスクがデビューし、1年弱経つ。日本中はタイガーマスクブーム、新日本プロレスブームである。

全国、どこの会場でもタイガーマスクが出場すると超満員。一般の知名度も、馬場猪木以上だ。

中二の僕はプロレス歴1年。知識を日々吸収し、ファンを超えてマニア化していた。身長や体重どころが、ターガーマスクのあらゆるサイズ、趣味嗜好まで、すべてプロレス大百科で暗記していた。

タイガーマスクだけではなく対戦したレスラーもノートに書き写していた。当時はネットもなく、プロレス雑誌の試合の記録しか情報がなかった。それでも活字化していくたびに自分が新聞記者であるかのように錯覚し、クラス一いや学校一のプロレス研究家になっていった。

そして、僕の心の英雄が、とうとう海を渡り、アメリカのマジソンスクエアガーデンに登場した。

タイガーマスクがマジソンスクエアガーデンに登場

WWFのジュニアヘビー級チャンピオンのタイガーマスク、日本デビュー戦のような、玩具のようなマスクではなく銀のベルトをした黄金のマスクだ。

対戦相手はおなじくダイナマイトキッド。デビュー戦のカードが再びアメリカで実現した。

ダイナマイトキッドは、ブロンドヘアをオールバックにし、チョイ悪の映画スターのような雰囲気で、おまけに珍しくショートタイツだ。リングアナウンスも英語で格好がいい。

レフェリー、タイガー、キッドの3人がリングに揃ったが、レフェリーが一番体が大きかったのはご愛敬。

タイガーマスクvsダイナマイトキッド

ゴングが鳴る。タイガーマスクは日本と同じいつものステップだ。まるで、バスケットボールのゆっくりとしたドリブルのように、ピョンピョンと跳び跳ねながらキッドを牽制する。

と、その瞬間高速のスピンキックに、足払い! 初めて見るタイガーの動きに観客は驚きの喚声。ダイナマイトキッドのアームロックにも体をくるりと回りながら切り返す、ショルダースルーもすくっと立ち上がりキッドを翻弄していく。

タイガーの一つ一つの動きに観客から拍手が巻き起こる。タイガーはキッドをヘッドロックに決めた瞬間、もう文字では説明出来ない動きだ。キッドの首を決めたまま何度もタイガーはコマのようにスピンして、最後はカニばさみで前のめりにキッドを倒す。

タイガーの独壇場の動きに大歓声! さすがタイガーだ。晴れ舞台のキッドも負けておらず、ひと呼吸置き、ラフファイトの走る。タイガーの弱点は意外にラフファイトに打たれ弱いところがある。

ボディスラムにヘッドバット、サイドスープレックスにブレーンバスターで攻め続ける。

日本のヒーローから世界のヒーローに

タイガーも負けてはいない。形勢逆転のソバットに観客の度肝を抜いたサマーソルトキック、ショルダースルーからのドロップキックで、キッドを場外に蹴散らす。そして最大の見せ場だ。タイガーは場外のキッドに向かって、ダイブ…と思わせロープを使ってくるりとリングイン。

「こんな試合は見たことがない」という表情で手拍子も起きる。まさしく、日本のヒーローから、世界のヒーローになった瞬間だ。

キッドも最後の力を振り絞ってタイガーを攻め立てる。延髄斬りにボディスラム。そして、キッドの最大の切り札、ダイビングヘッドバットだ。しかし、タイガーは間一髪切り返し、ブレーンバスター。

そして、秘密兵器、トップロープに上がったタイガーは、ゼロ戦が宙返りするようにキッドにダイブして勝利した。タイガーマスクの6度目の防衛だ。

この試合は日本で行われていたダイナマイトキッド戦とは雰囲気が違った。両者、十二分に見せ場を作り、とても流れの良い素晴らしい試合だった。

僕はこの試合もビデオに録り、プロレスを初めて見る人の入門用マッチとしてたくさんの人に見せた。案の定、見た人のほとんどがタイガーマスクのファンになり、次々と信者を増やしていったバイブルのような試合だった。

(文・GO)

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