K-1中量級の緊張感!チンギス・アラゾフvsジョーダン・ピケオー

2017年、新生K-1スーパーウェルター級トーナメント準決勝。

チンギス・アラゾフvsジョーダン・ピケオーの1戦を紹介したい。

チンギス・アラゾフvsジョーダン・ピケオー

−70kgのスーパーウェルター級はかつてK-1MAXで活躍した魔裟斗らの階級でもあった。軽量級よりもパワーがあり、重量級よりも早いこの階級は外国人選手の強さが際立つ階級でもあった。

トーナメント優勝候補のアラゾフは同大会がK-1初参戦の24歳。身長181cmのリーチとその柔らかい動きから繰り出される打撃で1回戦では中島にKO勝利し、準決勝に進出。バランスに特化した打撃力でパンチ、蹴りでのKOができる多彩なファイター。

対するピケオーもKrush参戦後は当時、魔裟斗と激闘を繰り広げた佐藤嘉洋にKO勝利を収め、対日本人無敗を誇る27歳。バダ・ハリらを輩出したマイクスジムに所属している。

こちらも1回戦では日菜太に完勝している。フルラウンドを戦ったピケオーに比べ、KO勝利のアラゾフの方が体力面でやや有利と思われた。

ピケオーは2年前にも開催された同階級トーナメントにも参戦し、決勝まで上り詰めるも1RKO負けを喫し、王座を逃した。ピケオーにとっては2年前の雪辱を果たしたいトーナメントでもあった。

動きを見切ったかのようなチンギス・アラゾフ

試合開始早々、荒削りな打撃でプレッシャーをかけていくピケオーに対してアラゾフは往なしていく。

互いに笑みを浮かべ、強者同士の強さ比べを楽しんでいるようだった。

アラゾフはピケオーの打撃を見切る安全圏から、隙をついてノーモーションのストレートを当てる。ピケオーが思い通りの打撃を当てられない場面が段々と目立ってきた。

1R開始1分半で見切られていることを察知したピケオーは圧力姿勢を解除し、慎重な動きに変わった。ピケオーの圧力が消えるや否や、今度はアラゾフの打撃数が目立ってくる。

反撃するピケオーの打撃は依然として見切られている。動体視力もいいアラゾフ。

ピケオーの顔面からは鼻血が伺える。距離をとったアラゾフの前蹴りをバックステップで躱したピケオーは左フックを飛び込むが距離が遠く、空振り。

近距離になった両者、それと同時にアラゾフが前手のノーモーションの右を放つ、ピケオーも右フックを放った。クロスカウンターがピケオーの顎を捉え、ピケオーが後ろから崩れ落ちた。完全に失神したピケオーは立ち上がることはできず、アラゾフの1Rノックアウト勝ちとなった。

日本人では太刀打ち不可能?K-1中量級の緊張感

当時この試合を私は生観戦していた。

リングサイドの私の席で聞いたノックアウト時の音が今でも印象に残っている。中量級の中でも重い音がした。リングに倒れたピケオーの体の音も軽量級とは違う重量感のある音がした。

中量級の特徴はどの階級と比較してもパワー、スピードを兼ね揃えたファイターが強いイメージがある。1つの打撃に特化しているだけでは勝つことのできないバランス重視であると感じる。

アラゾフ、ピケオー共に高身長のリーチから繰り出される打撃のパワー、テクニックは日本人では太刀打ち不可能なように感じさせる試合運びであった。

この試合でのKOが更に際立った理由として私は、乱打戦やどちらかが効いている描写もない中でKOが突然訪れたことだと思っている。

KOの前兆がない中での衝撃は格闘技の醍醐味と言える。その醍醐味を久しぶりに感じられた試合でもあった。

一種の切り合いに近い緊張感がそこにはあった。外国人選手同士だからこそ発することのできる緊迫した雰囲気が試合中は充満していた。

互いにホームの地ではない環境で戦わされているという状況が創り出したものかもしれない。

(文・Totty)