私の父は剣道の指導者だったため半強制的に剣道を習わされた。そのため、人一倍厳しくしごたれたであろう。技も沢山教えてもらった。その中で一番好きな技が胴である。
初めての得意技は面返し胴
剣道は時間内に相手に技を繰り出し3人の審判の内、2人の審判に認められて初めて一本(ポイント)になる。剣道の打突部位は頭上部の面、腕部の小手、喉部の突き、腹側部の胴がある。
何故、胴が好きになったかと言うと初めて父に教わった技が胴だからである。もう1つ理由があるがそれは後程はなそう。
当時、私の道場は3班制となっており、3班は始めたばかりで防具を着けていない初心者、2班は防具を着けているがまだまだな子供たち、1班はそれ以上の子供たちと言う分け方をされていた。
稽古は夕方から始まって3班、2班、1班の順に行う。
私の父は1班の指導者をしており2班、3班の指導者は道場の創設者の方がされていたため1班に上がるまでは道場で父に指導されることはなかった。
私が2班の時の道場内の練習試合でトーナメントの決勝戦まで上がった時、偶々か故意かはわからないが父が見に来ており決勝前に父に呼ばれ、その時に習った技が胴だった。
相手は学年が1学年先輩で彼との相性は10回試合をすれば7~8は負けるだろうという感じで正直分が悪かった。その時に教わった技が相手の竹刀を払い面を打つと見せかけての胴である。結論から言うとその技のおかげで勝つことができ、同時に1班に昇格した。
私の道場では父が手首が柔らかく小手が得意だった事もあるのか先輩方はみんな小手が上手だった。だが、当時私は手首が硬く小手が苦手で小手打ちの練習では毎回父に怒られ泣かされていた。
小手が人並みに打てるようになったのは1年後くらいだろうか。その代わり胴はみるみる上手くなった。その時の得意技が面返し胴である。
どのような技かと言うと相手が面を打って来たときに竹刀で面をかわし胴に切り返す技である。私は体が小さく相手がよく面を打って来ていたので私にはドンピシャの技であった。それだけでは相手に読まれるので色々な返し技を身に付けた。
そのせいもあり高校卒業までは自ら技を積極的に出し攻撃的な剣風よりは相手が出てきたところをどうにかして勝つという防御的な剣風となっていた。
るろうに剣心をヒントに面抜き胴に発展
高校を卒業して大学に進学したのだが、大学に入った途端に稽古量が今までの4分の1~5分の1程になり段々返し技の勘が薄れみるみる下手になっていた。それと同時に人並みではあるが身長が伸びたため自ら技を積極的に出す剣風にスタイルを変えていった。
だが、それで勝てる程剣道は甘くない。その時に返し胴だけはなんとかできていたが以前程技の切れ味が無かったので色々考えていた。
今まで何故胴に拘って来たかというと面、小手は相手が棒立ちであれば素人が見てもわかるが一連の動きの中で見ても早すぎて分かりにくいからだ。
それに比べ胴は素人が見ても分かりやすく、カッコいいと思っていたからだ。
そんな時にふと漫画のるろうに剣心を久々に読み主人公の緋村剣心の必殺技『天翔龍閃』を見て閃いた。
天翔龍閃は簡単に言うと緋村剣心の得意技の抜刀術の上位互換である。返す事ができないなら抜いてしまえばいいと思った私はそこから面抜き胴という技を身に付けた。
面抜き胴とは相手の面を竹刀でかわすのではなく、相手が面を打って来たときに身体を横に捌き相手の胴が空いた所を胴を打ち抜ける技である。
これは難易度で言えば返し胴より難易度が高い。だが決まれば返し胴よりカッコいい。私は相手の技をかわすことには自信があったためコツさえ掴めば身に付けるのは簡単だった。
そこからは自分から繰り出す技と抜き胴のお蔭で技のバリエーションも増えそれなりに勝てるようになっていた。大学は中退したのだが社会人になってから団体ではあるが県大会で優勝もした。その中で私個人は全勝もした。
正直、胴に関しては私が住んでいる県で一番上手い自信もあった。そこから数年は自分の剣道に自信も持てた。
幽遊白書に学ぶ得意技を生かす方法
それから仕事が忙しくなったのもあり稽古もさらに減り、稽古不足もあり試合に出ても自分の満足できる試合ができなくなってきてみるみると自信が無くなっていった。
自分の調子がよかった時のビデオを見たり強い選手の試合をYouTubeで見たりしてイメージは作れたが身体がついていかなかった。
また、得意技に拘りすぎて相手に読まれ勝てない事が続いた。
そんな時に偶々読み返していた幽遊白書の蔵馬と黄泉というキャラのやり取りで、
蔵馬「切り札は先に見せるな」
黄泉「見せるなら、さらに奥の手を持て・・・か」
というセリフを見て凄く感銘を受けた。
さらに、プロレスを見ていたとき大好きな選手の1人でNOAHのKENTAと言う選手がgo 2 sleepと言う必殺技の他に新技のgame overと言う技を身に付けてJr.ヘビーの身体でヘビー級の相手と戦い勝利し、ヘビー級のチャンピオンベルトを奪取していた。
私が思うに新技のおかげで戦いのバリエーションが増えたと感じた。
るろうに剣心、斉藤一の牙突に憧れ
だから私はもう1つの切り札を模索した。
実は高校の時に片手突という技が得意だった。これはるろうに剣心の登場人物の斉藤一というキャラの牙突という技が好きだったためである。
本当かどうかは定かではないが実在の斉藤一は左片手突きが得意だったそうで剣道でも片手突きは左で繰り出すため私はこれだと思い練習し得意技にしていた。
だが、大学に入りすぐに原付で転倒し、その時に左手の握力が弱くなってしまい左手で2リットルのペットボトルを握ることも困難で、この技は使えなくってしまった。
今では完治したが前ほどの技には程遠いので諸手で突いてみたとこ以前の勘もあるのかとてもしっくり来たため諸手突きを鍛えることにし、この技を切り札にしようと思った。
そして試合の組み立て方も変えた。自分の切り札の胴をここぞという時に出すようにした。そしてもう1つ意識したのが得意技を必殺技にすることである。「必殺技」は必ず殺す技と書いて必殺技である。私が切り札を繰り出した時に必ず一本にするという意識を強くしてその技を鍛えることしたことでまた自信を持つことができた。
剣道以外からも学び、人とは違う技を
私が剣道をするに当たって心掛けていることはとにかく自信を持ってすることである。私は身体が小さかったため大きい相手と真っ向勝負しても勝てない。
それは今でも同じで人並みに身長が伸びたと言っても170センチも無いためやはり大きい相手の方が多い。そういう相手に自分の土俵に引きずり自分の自信のある試合展開に持っていく。
そしてもう1つ、これは稽古以外で意識していることしていることだが剣道以外のことからでも剣道に活かせる動きを探すことである。これはプロレスしかり漫画しかり何でも良いので剣道以外から剣道に結び付け人とは違う技、心構えを持つことである。
私はひねくれた性格をしているため人とは違う事をしたがってしまう。剣道以外からアイデアを取り込む事で自分というオリジナルを確立させたいという気持ちがある。もちろん剣道からもヒントを得ることはあるがそれだけでは限りがあるのではないかと思う。
実際、剣道以外からも学び、自分だけのオリジナルが成功した時の自信のつき方は、他の方法で得た自信のつき方よりも大きな自信につながった。このやり方でこれからも自分を高めて行きたい。
(文・たろ)