私が通っている大学は古豪と言われ昔は強かったが、現在は少し伸び悩んでいて大阪や関西でも勝ちきれないことが多かった。
みんな口には出さないが、今年もたぶん勝てないだろうと思っていた。しかしその年は一味違った。これは私がまだ大学生だった2010年代後半の話しだ。
高校では並みの選手だった剣道部の先輩
その年の先輩方も高校の成績は最高でインターハイ出場くらいで大学に入学するときは全国レベルではなかった。
しかし4年生になった先輩方は大阪大会、関西大会と他の大学を圧倒して優勝した。はじめて全員が本気で1つになっているなと感じたときだった。これはもしかして全国学生大会も行けるのではないかとそこにいた全員が思っていたと思う。
私はというと、全国学生大会での先輩方の試合を二階の観客席から見守っていた。
誰も予想していなかった学生全日本決勝進出
先輩方の試合の1回戦2回戦は見るに耐えないものであり「あの試合なら私が出た方が良いのではないか」と思うくらいの情けない試合をしていた。
3回戦で優勝候補の大学と対戦することになり、負けてしまうのかと思っていたが先輩方は人が変わったように強くなり、あれよあれよと強豪校たちを倒して決勝まで勝ち進んでいった。
私はまさかここまでこれるとは思っていなかったし、他のみんなも思っていなかったと思う。観客席で見ている人たちは自分は試合もしていないのに優勝したような喜び方で祭りのようになりかけたが、決勝戦をひかえた先輩方からは観客席まで届くくらいの緊張感が漂っており観客席の我々も自然と静かになっていった。
剣道学生全日本優勝に鳥肌と涙
いざ決勝戦がはじまると先輩方の試合に私たちは見入るように惹きつけられていき先輩方が光って見えた。
あの時は応援をしている私たちも試合をしている先輩方と一緒に試合をしていたのではないかと思う。試合は大将戦までもつれていった。
相手の大将は高校時代は超高校級と呼ばれるくらいの選手で、剣道をやっている人なら知らない人はいないくらいの相手だった。
しかし、先輩は相手が試合で何もできないくらい圧倒し、チームはなんと優勝した。その瞬間大学のOBのおじさんたちも自分たちも立ち上がって喜び自然と涙を流していた。
観客席から会場に降りて優勝トロフィーや優勝旗を見たとき、改めて先輩方は優勝したんだと実感がわきそのパワーに鳥肌がたった。
そして優勝トロフィーを見たときに、「俺が4年生になったら、もう一回この優勝トロフィーを取ってやる!」と強い思いを持ち、優勝トロフィーをあえて触らなかった。
頑張れば全国レベルに勝てる!
私はこの試合で自分のような選手にも人一倍頑張ればチャンスはあるんだ!私でも全国レベルに勝つことはできるんだ!と勇気をもらった。
トップレベルの選手が入学時にはいない中で4年生の時には全国制覇を達成する。凄く夢のある話でドラマのようなことが実際に起きることにビックリしたし、先輩方のおかげで自分たちがやってきたことは間違っていなかったんだと思うことができた。
私も先輩方のように、勝てるはずがないと思っている人たちに夢を与えたいと思った。