中学柔道で全国大会へ…最後まで戦える「追い込み」稽古のやり方

中学で柔道をやっていたときのこと。

私はかなりのあがり症で、試合前になると必ずお腹を下していました。

畳の上に上がると手足が震え寒くなり、不安な気持ちでいっぱいでした。勝てば勝つほど周りからのプレッシャーが大きく、いつも押しつぶされそうでした。

試合で実力を発揮する条件

試合前の緊張は上手く前向きに転換出来れば良いのですが、不安で仕方ない時もありました。どうすれば緊張を前向きに変換することができるのかを考えたところ、やはり稽古しかないと自分の中で答えを出しました。

柔道は対人競技で、畳の上には自分と相手しかいないため、体力や技術はもちろん、精神力が勝負の鍵を握ります。いくら練習で強くても、試合で実力を発揮できなければ練習の意味がありません。畳の上に上がれば気持ちが強い方が勝利する可能性が高くなります。

ここでいう気持ちの強さとは、自信に関係してきます。自信がないと不安になり、体が硬直して実力を発揮できない、という結果になるわけです。不安を拭い去る方法、それが追い込んだ練習をすることでした。

防戦一方の相手を投げる「追い込み」稽古

私の中学では、基本練習、寝技乱取り、立ち技乱取りが終わった後に「追い込み」というメニューがありました。乱取りで全てを出し切った後に、少しの休憩を挟んだ後に行っていました。

体が動く限界まで乱取りを続けるという練習でした。基立ちの要領で基に立つ人を決め、かかる人が防御に徹し、基に立つ人は相手を投げに行くという練習でした。通常の乱取りと異なり、相手が防御に徹しているので、試合を優勢に進められていると仮定した状況を作ることもできます。

相手が防戦一方なため、普段なら投げることができる相手でも、簡単に投げることはできません。それでも投げに行く、体力の限界の中でも自分で自分を追い込んで行く、という体力面・精神面共に強化できる練習メニューでした。

相手が防御している中、どのように組みに行くか、どのように相手を崩すかなど、体力の限界の中、頭も使いながらの練習は本当にきつく、いつも嫌でした。中には過呼吸になってしまう子もいるほど、強度の高いメニューでした。

がむしゃらに練習することで、競り合いのギリギリの場面で強さが出てくると監督は考えたようです。

体力と自信で全国大会への切符を手に

全国大会前の練習では、毎日このメニューが行われていました。特に、女子団体戦のレギュラーは、男子と追い込み練習をしていました。

そのおかげか、全国大会出場の切符を無事に獲得することができました。私の住む地方からの全国出場は数十年ぶり、学校からは初出場となり、新聞にも載るほどでした。決勝戦まで4回戦を勝ち上がり、決勝戦では中堅の子が試合時間ギリギリまで粘って、寝技で一本勝ちしたおかげで、勝利が決まりました。

これこそ練習の成果だと思っています。5回戦を勝ち抜く体力、決勝戦という張り詰めた状況の中、試合時間いっぱいまで戦える体力、そして最後の最後まで諦めない精神力は、「追い込み」の中で培われたものだと思います。

私自身も、試合前の緊張感はあったものの、「あれだけ練習したから大丈夫。あれほどの練習をした人はいない」と自信を持って試合に臨むことができました。

そして、先鋒で必ず一本勝ちしてくるという役目を無事に果たすことができました。

水分補給のルールをあらかじめ作っておく

この練習を行う上で注意してほしいことは、水分補給を必ずすることです。あと少し、あと少しと自分で自分を追い込んでいく中で、自分の体調管理を行うことは集中すればするほど難しくなってきます。

そこで、何本目かには水分補給をする時間を取ったり、しんどくなってきたところで各自水分を摂取するようになど、あらかじめ明言しておくことで、脱水や過呼吸などの危険を避けることができます。

練習をする当事者の体調をしっかり管理することが、この練習を行う際に大切なことです。