39歳になろうとする年に、マスターズ国際柔道大会に出ることを決意しました。現役を離れること約16年、ルールも新ルール適用なので帯から下を触ることができなくなっていました。
私は、肘と肩を故障してからというもの、使える技が足技と寝技のみになってしまいましたが、中でも小内巻き込みが大得意でした。しかし、新ルールだと、ズボンを握ると反則になってしまうので、小内巻き込みが使えないことが判明しました。
さて、どうしよう、使える技がないと思った時、先輩からあるアドバイスを貰ったのです。
それは、ズボンを握らなければ反則にならない、つまり、脇で相手の脚を挟むようにして巻き込めば良いということでした。
この、ズボンを握らないで相手を倒す小内巻き込みについて、詳しく解説をしていきたいと思います。
下半身に手をかけると反則になる新ルール
旧ルールだと、相手のズボンを持っても足を掴んでも反則にはならないばかりか、積極的に相手の脚を取りに行く選手もたくさんいました。
レスリングのタックルのような技が多用されていましたが、これを改め、一本に重きをおく見栄えのする柔道へと舵を切ったのが新ルールです。これにより帯から下を触ることができなくなりました。
小内巻き込み、朽ち木倒し、掬い投げ、肩車といった、帯から下を触る技は制限されました。技のレパートリーが削減するとともに、技の工夫が必要になってきたのです。
新ルールでも使える小内巻き込みとは
小内巻き込みは、相四つ(右と右もしくは左と左)で使用します。私は右組なので、相手も右組みの時にかけます。担ぎ技、特に一本背負いと組み合わせるととてもかかりやすいのも特徴です。
ここでは右組みで相手の右脚にかける場合を解説します。
まず、相手の釣り手を絞り、出来るだけ下に落とします。更に、自分の右手で相手を下方に崩し、重心を下げさせます。相手は嫌がり、頭をあげて上体を起こそうとしてきます。
ここで小内巻き込みに入れる体制になるのですが、相手の重心がうしろにないと小内巻き込みはかからないので、相手が上体を起こそうとするタイミングで、フェイントの一本背負いに入ります。勿論、見せかけです。
相手は、一本背負いから免れようとして、瞬時に重心を後ろに下げます。その瞬間が小内巻き込みに入るチャンスです。
右足を相手の膝下に絡めるようにして、右手を離して相手の右懐に潜り込みながら右の脇で相手の脚を挟み込み、そのまま浴びせ倒したら小内巻き込みの成功です。
この技は、相手が大柄な選手でもかかりやすいため、体の小さい選手向けの技だと言えます。特に、担ぎ系の技が得意な選手は、小内巻き込みをフェイントとして、交わされたところに担ぎ技に入るという、逆のパターンも有効です。
小内巻き込みを決めるポイント
小内巻き込みを決めるポイントは次のようになります。
- かける方の足の向きは、足の裏を自分の方に向ける
- 相手の引き手を下に落とす
- 手で抱え込む相手の脚は、反則にならないように脇で絞る
- 技に入ったら、返されないように全体重を相手の右足にかける
- フェイントの技は一本背負いなどの担ぎ系が有効
小内巻き込みは、相手から釣り手を離してかける技なので、一度かけたら元に戻ることが難しく、失敗したら逆に返されてしまうこともあります。
ですので、もし失敗したら、返されないように両手を離してうつ伏せになって、審判の待てがかかるのを待ちます。
もしくは、右手を相手の脚から離して腰に持ち替えて、そのまま大腰に入るというテクニックもありますが、これは相手の身長が自分よりも高くて、なおかつ体重がそんなに重くない相手にのみ有効なことが多いです。
相手が自分より小柄な場合は、小内巻き込みをフェイントとして相手の重心を前に崩した隙に右手で相手の奥襟を取ったら、そのまま内股や払腰などに入ることも可能です。
(文・黒帯ももこ)