大人も容赦なく指導する七段の先生に武道としての剣道を学ぶ

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小学生から大学卒業まで剣道を続けていましたが、社会人になってから仕事も忙しく、結婚して子供ができたこともあって、15年間剣道をしていませんでした。

子供も大きくなり、ようやく時間ができたところで、再開をするにあたって稽古場を探していた時期が数カ月ありました。

少ない時間でしっかり稽古ができ、さらに大人が稽古をしている稽古場でなければいけなかったので、探すのにはずいぶん苦労しました。そうしたなかで、出会ったのがN先生でした。

N先生は、七段の先生で、少年剣道を指導する傍ら、大人への指導もしてくださる先生で、週に1度地元の体育館で稽古をしていました。連絡をして防具をもって体育館に行くと、快く稽古に入れてくれました。以来、5年ほどお世話になっています。

剣道で大人を指導するのは珍しい?

年齢が上がっていくと、他人から自分の行いに対して指導が入るということは、どんどん少なくなっていきます。

剣道も同じで、大人になるにつれ、周りの人はなかなか指導をしてくれなくなります。とくに、全くの初心者ではない場合、ある程度剣道のかたちはできているので、指導する必要がないと思われているのかもしれません。

先生も大人ですし、気を使って指導をしないのかもしれませんが、とにかく「ここがよくない」といったことは言ってくれません。稽古場を探していた時に少しだけお邪魔した道場では、大人が少ないこともあって、指導されるということは皆無でした。

ところが、N先生は大人の私でも容赦なく指導してくれるのです。これは実にありがたいことで、かなり初歩的なこともきっちり教えてくれます。

私は、剣道を再開するにあたって、現役で剣道をやっている大人にどうにか勝てないものかと考えていました。N先生に出会う前は、ひとりでそのことを考えていたので、いい方法も思い浮かばず、ただ稽古をする毎日でした。N先生には直接わたしの考えていることを話したことはありませんが、先生は、私がなぜ剣道をしているのかを理解してくれた数少ない先生の一人なのです。

身体能力に頼らない武道としての剣道

N先生が指導してくださる剣道は、私が今まで知らなかった剣道でした。

これまで学生時代にしていた剣道は、相手の状況を考えずに自分のタイミングで打っていく自分勝手な剣道でした。こうした剣道は、身体能力に大きく依存したもので、素早く動くことを前提としています。

当然、年を取れば身体能力は落ちていくため、スピードもパワーも上回る若い剣士に負けてしまいます。

しかし、N先生が教えてくれる剣道は、自分の身体能力だけではなく、相手の身体も使って技を決める剣道でした。動かない相手に打ち込むには、自分が動く以外に有効打突を決める方法はありません。

それでは、自分の身体を使ってのみ技を決めようという自分勝手から抜け出していません。先生の教えは、相手に「出てきてもらって」そこに合わせてこちらの技を決めるというものでした。

相手に出てきてもらう、打ってきてもらったところを、こちらが打つので、自分だけで出るよりも半分だけ出るだけでいいのです。さらに、相手が向かってくるところを打つので、スピードもそれほど速く打つ必要がありません。

こちらが考えるべきことは、相手がいつ打ってくるか、どういうときに打ってくるかを考え、さらに、こちらがどういう具合に動いたときに相手が打ってくるのかを考えることなのです。

N先生にそのことを教えていただき、私の剣道は大きく変化しました。そして、現在でも少しずつ変化を続けています。先生にスポーツではなく武道としての剣道を教えていただいたおかげです。

(文・波之平)