中学でグレた自分をプロに育てたキックボクシングジムの会長さん

私が通っていたジムの会長さんは元キックボクシングの世界チャンピオンで実績を残した選手です。

他のジムを見てみるとプロで活躍していたけれど大きな結果を残せないまま引退してジムを開業する人が沢山います。

その中で私が通っているジムの会長さんは沢山の困難な激戦を制してきた人なので言われる言葉一つ一つがすごい心に響きます。

私が会長と出会ったのは小学四年生の頃です。サッカー少年でおっとりとした性格だった私のことを突然父がジムに通わせると言い出し通い出すことになりました。格闘技のジムと言ったらすごい厳しいイメージを私は持っていたのですがそんなことはなく、優しくてすごく面白い会長さんでした。

中学でグレてもキックボクシングは続けた

中学二年生の頃、世間でよく言われる中だるみの時期なので私も少し授業に出なかったり学校にお昼頃行くような生徒の一人でした。

そんな中私はキックボクシングだけは続けていたので周りとの喧嘩や、やっていいことの限度というものが自分の中でセーブ出来ていて大きな事件や喧嘩も一度もしたことはありません。

私は学校ではグレていて、ヤンキーのように周りから捉えられていたと思います。ですが、そんなヤンキーでも放課後は友達とどこかにたまって遊ぶのではなく、毎日欠かさずジムに直行していました。

練習をサボって友達と遊ぼうと思ったことは一度もありません。中学の頃から周りの友達はタバコなんて当たり前のように吸っていましたが私は格闘技をやっているので先輩から誘われてもキッパリ断り未だ一度たりとも吸ったことはありません。

会長さんを裏切りたくない

私がキックボクシングの練習に対して真面目だったのは、こんな私を真面目に教えて、時には叱ってくれる第二のお父さんのような存在の会長さんを裏切ることが嫌だったからです。

会長さんには毎回言われていました。「お前は格闘技を習っているんだから喧嘩するなよ」と。

なので自分はキックボクシングをやっているんだ、他の人とは違うんだという自覚を持って過ごしていました。

会長さんとは、ジムのことだけではなく日常の生活についても話したりしていました。学校での恋愛話や、テストの結果、旅行の話など、本当になんでも相談でき、真面目にやるときはやる、練習以外の時間は明るく接してくれるそんな人でした。

プロテスト受けてみるか?

毎日練習に欠かさず行っていた私ですが一度1~2週間休んでしまった時期がありました。今考えてみるとなんで休んだのか自分でもあまりわからないのですが、その時は感情がコントロールできず練習に行く気がきっぱり無くなってしまったのです。

1~2週間も休んでいるとジムに行きづらくなってしまい、そんな時に会長さんから1本のLINEが入りました。

「大丈夫か?明日はジム来れるか?」というメッセージでした。

そのLINEで我に帰り、次の日はジムに行こうと思い「はい、行きます!」とLINEを返して寝ました。

翌日、いつも通り学校に行き放課後、時間が経つとやっぱり行く気が無くなってしまいます。でも、昨日送ったLINEを見返して休んでられないなと思いジムに向かいました。

怒られるかと思っていた自分は何故か緊張しながらジムに入りました。すると、笑顔で会長さんが「久しぶりだな」と言ってくれ自分の緊張は一瞬でどこかに解き放たれました。

いつも通りストレッチをしてアップを終え、座ってテーピングを巻いているとジムの会長さんが「プロテスト受けてみるか?」と言いました。私は突然のことだったのでビックリしましたがプロを目指していたのでもちろん即答で「はい!」と答えました。

ですがその直後、会長が真面目な顔つきになり「それなら遊んでられないぞ、周りとは違う自覚を自分でもて」と強い口調で言われ、その時私はプロになるにはもっと強く自覚を持たなくてはと思いました。

そんな会長さんがいたおかげで私は今毎日練習に励むことができ、プロで活躍できています。あの時にあの一言がなければ今の私はいなかったと思います。

(文・ryu)