2017年K-1フェザー級ワンマッチ。武尊vsビクトー・サラビアの試合について紹介したい。
新生K-1のカリスマ・武尊の復帰戦
新生K-1で圧倒的なカリスマとなった武尊。前年にあたる2016年はK-1フェザー級王者に輝き、2階級制覇を成し遂げる。
しかし、トーナメントによる怪我で半年間、長期欠場を余儀なくされた。武尊の復帰戦の相手となったのはアメリカのビクトー・サラビア。
元ストリートファイターでもあった男は小柄ながらアグレッシブなファイトスタイルと重い打撃が特徴だ。両者負けん気の強い性格ゆえに、噛み合う攻防が予想される。
武尊vsビクトー・サラビアの試合展開
試合開始から武尊は前蹴りやローキックを中心とした蹴りを多用していく。身長の高い武尊がリーチの長さを利用して主導権を握る。
対するビクトー・サラビアも武尊の蹴りに対して蹴りで応戦していく。戦前に予想されたボクシングの撃ち合いではなく両者蹴り主体の攻防となった。
武尊の膝蹴りが目立ってきた。身長の低いサラビアにはこの膝がかなり有効打となる。1R終了間際に武尊が蹴りから重いフックへと繋げ、近距離の撃ち合いになった。
武尊のパンチも入るが最後にサラビアのカウンターも当たった。両者撃ち合いでは互角だ。
武尊とサラビア、一進一退の攻防が続く
2Rも蹴りで武尊が主導権を握りにきた。サラビアは戦いづらそうだ。サラビアが膝蹴りに意識がいくと武尊はパンチを見舞う。この膝蹴りから顔面へのフックに突破口を見出しているようだ。
対するサラビアも足を使いながら武尊の攻撃に合わせたカウンターで武尊の顔面に打撃を与える。両者撃ち合いに転じると互いに舌を出して挑発しあう場面も見られた。両者一進一退の攻防が繰り広げられる。
深刻なローブローを克服する武尊
第3Rも武尊の重いカウンターがサラビアに入り、サラビアは後退する。しかし試合中盤にアクシデントは起きた。サラビアの放ったバックスピンキックが武尊の下腹部を捉えてしまった。
武尊は悶絶しながら倒れた。武尊の表情は青ざめ、時に痙攣している武尊の様子に会場からは心配の声も上がった。
これ以上試合することはできない。誰もがそう思った。が、武尊は立ち上がり試合再開の意思を見せた。そして再び両者が撃ち合う。
武尊はローブローのダメージがあるはずであるが、前に出てプレッシャーをかけていく。武尊の左フックがサラビアの顔面を捉え始め、サラビアは既に鼻から出血をしていた。
武尊の回転力のあるフックのコンビネーションが出始める。こうなると武尊のペースになってくる。武尊のストレートでサラビアがロープにもたれたところで渾身の左カウンターがサラビアの顎に入り、倒れた。立つことのできないサラビア。
窮地に立った武尊が見せた衝撃的な底力だった。
武尊が見せたプライドとスター性
武尊がK-1で背負っているものが痛感させられた試合であった。思わぬアクシデントで試合が中断し、武尊の表情から尋常ではない痛みも伺えた。
約半年ぶりのリング。復活した自分の姿をKOという形でファンに示すことに拘っていた武尊。復帰戦をノーコンテストにするなんてことは彼のプライドが許さないであろう。
武尊自身も試合後のインタビューで試合中断の間にお客さんが退屈ではないか心配したとコメントしている。彼のスター性が垣間見れた。
また、蹴りの技術が上達していたこともこのKOを結びつけた要因だった。蹴りで散らしたからこそフックが当たるようになっていった。
現在の武尊の完成されたファイトスタイルは、この試合の頃から蹴りを多用するようになったことで形作られたと感じる。困難を克服し、また一段と大きくなった武尊はK-1を背負う器へと進化していた。
(文・Totty)