松田玲奈は敗退…優勝の河野沙捺が五輪女子ボクシングの切符を手に

キックボクシングの元女子世界フライ級王者の松田玲奈(れな)が来年の東京オリンピックでボクシングの代表を目指して10月に札幌で行われる全日本女子選手権に出場する。キックボクシングからアマチュアボクシングへの転向者は男女を通じて初めてだ。

この記事は、

の二部構成となっています。

◎2019年 第18回全日本女子ボクシング選手権大会
期間 2019年10月16日~20日
会場 北ガスアリーナ札46幌、新中央体育館

松田玲奈のボクシング転向宣言

24歳の松田は2016年10月にキックボクシングのリング上からボクシングへの転向を自ら表明、今年6月に日本ボクシング連盟に選手登録が認められた。その間、葛飾ボクシングクラブで、ボクサーとしての練習を積み重ねてきた。

松田はアマチュアボクシングへ転向した理由をキックボクシングではもう戦う相手がいなくなったと言い、東京五輪ではパンチの強い選手ばかりが集まるので、そこで自分を試したいと思います、と述べている。

強豪ひしめく東京五輪女子ボクシング候補

松田は約5年間に及ぶキックボクシングの世界では、世界タイトルを三つも獲得し、美人のキックボクサーとして人気を博した。

彼女のキックボクサーとしての戦績は15勝(5KO)1敗4分だった。この経験を活かして、ボクサーとしても一気に頂点に上り詰めたい松田だが、フライ級(48kg-51kg)には日本にも強豪が沢山いて、女子といえども層が厚く、そう甘くはない。

昨年の全日本選手権で優勝した岡山自衛隊体育学校の晝田瑞希(ひるた みずき)を始め、その晝田に決勝で敗れた当時近畿大学4年生の河野沙捺もいる。河野の本来のウエィトはバンタム級(51kg-54kg)だが、東京五輪では実施されないので、体重を落としての出場だった。もし体重調整が上手くいけば、体が大きいだけに怖い存在となるかも。

埼玉自衛隊体育学校の並木月海(つきみ)は2018年世界女子ボクシング選手権大会フライ級銅メダリストで、男子キックの”神童”那須川天心とは幼なじみで、幼い頃、二人で極真空手の練習に没頭したそうだ。

加えて、元プロボクシング世界チャンピオンのファィティング原田のジムで練習する和田まどかがいる。昨年の世界女子ボクシング選手権大会フライ級銅メダリストで、キャリア十分の選手だ。昨年の全日本選手権大会3位の木下鈴花(りんか)も侮れない存在だ。

ボクシングに生かせる松田玲奈の素質

そんな中にあっても、松田玲奈に期待したくなる理由はある。

松田の武器は強烈な右ストレートから腰の入った返しの左フックの連打だ。ミット打ちだけを見ているとなんとなくモンスター井上尚弥を彷彿させる。それほど迫力が伝わってくる。身長161cmもフライ級の選手としては理想的だ。

彼女のキックボクシングでの戦績を見て、勝利数の割に思ったほどKOの数が少ないと気がつかれた方もおられるだろう。キックでは手と足を使うので、ある意味、どちらも中途半端になり、松田の場合はむしろパンチだけのボクシングに専念した方がよりパンチが活きてくるのではないかと分析する専門家もいる。

女子ボクシングの試合は1ラウンド2分間の3ラウンド制で、間に1分間の休みが入る。プロの全身を使うキックボクシングで培ったスタミナを考えると、松田はこのルールなら試合開始のゴングが鳴るやいなや、いきなりノンストップの攻撃に出ても耐えうるスタミナの持ち主といえる。相手に様子を探る間も与えない展開も考えられる。

そんな松田が、上に述べた選手達とどんな迫力のある試合をするのか、今から全日本選手権が待ち遠しくて仕方ない。そして、勝つにせよ、負けるにせよ、東京五輪出場に立ち向かったという事実は彼女のこれからの長い人生に絶対にプラスとなって返ってくると信じて疑わない。

松田玲奈、健闘も2試合目で和田まどかに敗退

第18回全日本女子ボクシング選手権(北ガスアリーナ札46幌、新中央体育館)に出場した松田玲奈の戦績を振り返ってみよう。

2019年10月17日、松田は1試合目の対戦相手となる安村可麗(堺工科高校)と対戦。

小中学生の部から公式戦で経験を積んできた安村可麗は高校3年生。1ラウンドには松田に対してストレート系のパンチをヒットさせる。

2ラウンド以降は松田の左フック、右ストレートがヒットし、最終ラウンドの乱打戦では松田が優勢に攻め込んだ。判定は3-2で松田が2試合目への進出を決めた。

続く10月18日の2試合目。松田の対戦相手は試合前の展望記事でも注目していた選手の一人、和田まどか(福井県スポーツ協会)だった。

和田は松田にカウンターの右フックをヒットさせスタンディングカウントを奪うなど試合を優勢に進める。

2人は激しく打ち合い、試合後、「右ストレートに手応えを感じた」という松田だったが、判定は5-0で和田の勝利となった。

敗れはしたものの元キック女王・松田のファイトスタイルは、対戦相手の和田が「正攻法で完成度が高い」と評価するほど、しっかりとボクシングに適応したものだった。

河野沙捺が和田まどかを制してフライ級優勝

第18回全日本女子ボクシング選手権大会フライ級のその後の展開を追ってみよう。

フライ級の決勝には、松田に続き準決勝で木下鈴花に5-0で勝利した和田まどかが進出。

対戦相手は、準決勝で新本亜也を下して勝ち上がってきた近畿大学の河野沙捺だ。河野はもともとバンタム級の選手で高校2年生から全日本で3連覇している。しかし、オリンピックにはバンタム級が無いためフライ級に転向した経歴を持つ。

2人は2019年10月20日のフライ級決勝戦で対戦。

実はこの顔合わせ、直前に行われた茨城国体2019(10月7日)における同階級の決勝戦の再現となっていた。茨城国体においては、和田の接近戦の猛攻に得意のストレートで応戦した河野が4-1の判定勝ちを収めている。

強敵の和田ではあるが一度勝利しているだけに、河野に苦手意識はなかったものと思われる。20日の全日本選手権においても試合を優勢に進めた河野が3-2で和田を下して勝利。この階級で東京オリンピック女子ボクシング代表の切符を手にしたのは河野沙捺だった。

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