私は、中学の剣道部に入部して、外部講師の先生にご指導していただきました。
先生に出会ってから、中学を卒業するまでの3年間、そして卒業後にも度々お世話になることになります。
中学剣道部の先生は元警察官
中学生だった当時、初心者として練習に参加していたのですが、覚えることも多く運動神経が良いわけでもないので筋トレについていくのに精一杯な状況でした。
そんな私たち初心者にも根気強く指導して下さった先生が、外部講師として来られていた大坂先生(仮名)です。元警察官の方でした。
部活動の時間になると、剣道場に来られ、駆け足、準備体操から一緒に練習を始めました。
ピシッと叱ってくれる先生
振り返ってみれば、稽古になると相手に合わせた段階で、一人ひとりの学生に合った少し難しい稽古をつけてくださっていました。
ちょっとした課題のある練習メニューといったところです。
定年を迎えられているとは、とても思えないくらいに体力のある大坂先生の姿に、負けていられないとよく思って竹刀を振っていました。
もし道場で、部員が時間を守らずにふざけたり遊んだりしてしまうことがあれば、ピシッと叱って何が大事か考える機会をつくってくれました。
稽古が終わり、先生が帰られる時には、誰から言われるでもなく、先生の荷物を持たせてもらっていました。
怖いところもあるんだけれど、やはり慕ってしまう先生でした。
部員のことを本当によく見ている
本当によく学生一人ひとりのことを見てくださる先生だったというのが、印象です。
そして、休憩時間になると、部員が座っているところに来て「〇〇(生徒の名前)、お前の得意技は出小手だな」など、学生の良いところを挙げてくださるのです。
先輩、後輩の関係は、他の部に所属していたクラスメイトの友達からみても良く見られていました。
それも大坂先生がおられてこそだと、中学生の私は内心そう思っていたものです。
今でも覚えているのは、部員の体調の変化にもよく気づいて声をかけている姿です。
「無理しなくていいからな」。思春期の心身の不安定な時期に、この一声がどんなに有難かったことか、きっと想像がつくと思います。
先生を悲しませる訳にはいかない!
時に厳しく、時にあたたかく関わって下さる大人が、身近におられたことは、中学生の私にとって、とても大きかったです。
はっきり言えるのは、大坂先生の存在は、私の良心を幾分強めてくださっていたということではないかと思います。
何か選択をするときに、大坂先生を悲しませる訳にはいかない!そんな考えが、ふっと頭を過ることもあったのです。
これは大げさに聞こえてしまうかもしれませんが、例えるなら、良心に水をやり肥料をやってもらったような実感があります。
そのことの証に、OB、OGの先輩方と一緒に稽古をした後、「こんな良い先生、なかなかいないよ。ほんとに、感謝しないとね」
と話してもらったこともありました。
それなのに、言われたとおりに出来ず、良くない癖を改めようともしない、どうしようもない部員だったことを恥ずかしく思います。
だけど、そんな自分も優しいまなざしで支えてもらっていた、この事実は心に刻まれていくでしょう。
共に過ごしてもらった時間はあっという間でも、先生に出会えてよかったとしみじみ思います。
(文・しろくま)