2017年5月20日。ボクシングの練習が午前で終わったその日。仲のいいジム生と一緒に、会長からもらったチケットを持って有明コロシアムに向かいました。
目当てはもちろんメインイベントの村田諒太vsアッサン・エンダム。
竹原慎二以来、日本人2人目のミドル級世界王者が生まれる瞬間を見ようと、会場と同時に席についていました。
一緒にいたジムのメンバーは、アメリカでアッサン・エンダムと同じジムで練習したことがあるらしく、かなり手ごわい相手だと言っていました。
しかし、強いとは言っても相手はあの村田諒太です。私の予想はやはり村田勝利。それがまさかあんな結果になるとは、思いもよりませんでした。
村田諒太vsアッサン・エンダムの試合
村田諒太のリング上での最大の特徴と言えば、ガードを高く上げて相手にプレッシャーをかけつつ、ここぞというチャンスでまとめる。
防御は最大の攻撃と言わんばかりに手数は少なく、この試合も1分40秒あたりまで村田のパンチは1発も出ていませんでした。
試合が動いたのは2ラウンドの村田の打ち下ろしの右から、会場がどっと盛り上がりました。
真上から打ち下ろした右で、エンダムの後頭部に当たっていたように見えましたが、効くような感じではなかったようでした。
結果を分かっているから言えることですが、かなり甘めに見て、3ラウンドまでは全てエンダムの10-9でつけていいでしょう。
防御重視で手数が少ない村田諒太のボクシング
改めてこの試合を見返して、かなり甘めにエンダムにつけても115-112で村田勝利。あくまでも私の素人採点ですが、日本ボクシング協会もWBAに抗議文を出しているところを見ると、かなり悪質な判定であったことが分かります。何より、WBAの会長がこの判定に関して不満を示していました。
エンダムに限らず、それ以降のロブ・ブラント戦などを見ると、村田が自身のパンチ力に圧倒的自信を持っていることが分かります。
防御は最大の攻撃と言わんばかりにガードを高く上げ、相手に圧力をかけ自分を中心に相手をサークリングさせる。そしてそのサークルの円を段々と縮小させ、詰まらせてパンチで動きを止める。これが村田の今までの勝ちパターンでした。
悪く言えば手数が少ない。自分のパンチが当たれば倒せるという自負があるため、必然的に多くの手数は必要ないと思っていたのでしょう。そのマインドが変わったのが、対ロブ・ブラントの第2戦だと思うのですが、それまでは防御偏重のスタイルが主でした。
疑惑の判定?村田諒太の敗北
しかしそうは言っても、12ラウンド終了のゴングが鳴り、判定のその時まで村田の勝利で間違いなしだと思っていました。
今冷静に見て、1ラウンド毎に点数をつけても村田勝利になるのですから、現場で見ていた私がそう思うのも無理ないと思います。何より、当日の観客、テレビで見ていたファン、さらにはエンダムサイドであっても、村田勝利で間違いなしと確信していたのかもしれません。
しかし、リングアナの告げた勝者の名前はアッサン・エンダム。村田はミドル級の王座獲得に失敗したのでした。
確かにボクシングでは手数も重要
この試合が印象的なのは、勿論その試合内容と判定結果の埋めがたい溝にあります。そしてやっぱり手数は重要なのだと再認識した試合でした。
当時プロテストに臨もうとしていた自分が一番言われていたのは、とにかく「手数、手数!」。ジャブ、ワンツーを出して出して出しまくるということ。
プロテストもそれで合格できますし、4回戦選手の判定で一番見られるのは手数です。
しかし、村田諒太の試合は世界戦です。ボクシングの判定は、相手に与えたダメージ、リングジェネラルシップ、オフェンシブ、ディフェンシブの、大体この4項目で採点が行われます。最重要項目は、やはりダメージです。
それゆえ、なぜあの結果なのか。帰り道、プロで何戦もし勝ち越している先輩に聞いても、分からないと言っていました。
(文・Keisuke)