ボクシング 試合

井上尚弥vs河野公平を会場で観戦…井上を変えた名ファイトを回想

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2019年5月19日イギリス・グラスゴーにて井上尚弥がIBFバンダム級王者のエマヌエル・ロドリゲスを2RTKOで圧倒したニュースは世界に衝撃を与えた。

1Rこそ互角の内容であったがインターバル中に頭の中を整理し、2Rが始まるとすでに自らの距離を維持し、得意の左フックでロドリゲスをキャンバスに沈めた。

相手が立ち上がってからも冷静にボディを攻め、計3回のダウンを奪ってWBSS準決勝を勝利した。この圧倒的な勝利は日本でも広く報道され、ボクシングファンはもちろん、これまでボクシングに興味のなかった人々まで魅了することになった。

そこで今回私は、井上尚弥が圧倒的な強さを手に入れるまでの通過点となった試合を紹介しようと思う。

井上尚弥vs河野公平

2016年12月30日に行われた井上尚弥vs河野公平の対戦は、私にとってはじめて会場で観戦する試合だった。

有明コロシアムでボクシングを生で観る衝撃を肌で感じた。試合は23歳怪物の井上と、36歳雑草魂の河野という正反対の人生を歩んでいた2人により行われた。

エリートがその実力を発揮するというストーリー、あるいはベテランが期待のホープを打ち負かすというストーリー、どちらも描くことができ、とにかく名試合になることだけが明らかであった。

試合会場でなければ分からない井上尚弥のすごさ

試合の序盤は、想像以上に挑戦者の河野がプレスを強める一方、井上は多様な左ジャブを使って相手が近距離に入ってくることを妨げた。特にこの日は左手の使い方がうまく、左ボディは何度も地鳴りのような音と共に、河野の脇腹を痛めつけていた。

この音は現地でしか聞くことができない音で、とても衝撃的であった。また、テレビ中継を通してでは伝わらないものとして、フットワークのうまさも感じた。

幼少期から父親に反復練習を叩き込まれてきた井上尚弥のフットワークはとても素晴らしいものであった。硬い頭を前に出しながらロープに詰めようとする河野を、フットワークで相手の裏をつく体重移動などでかわし、相手の土俵に入らないように工夫していた。

3Rには、ボディを警戒した挑戦者に右フックを顔面へ打ち込み、会場には河野は長くてあと1Rという空気を作り上げた。

河野公平の反撃のゆくえ

しかし、そこで終わらなかったことがこの試合を名ファイトにしたといえる。何発も強打をくらい、今にも倒れてもおかしくない状態の河野が4R、5Rと前に出て井上尚弥を後退させるシーンが見受けられた。

井上は優れたDF技術でパンチをかわしたり、ガードの上を打たせたりしていたが、守っても河野は必ず打ち続け会場には「井上も少しもらっているのではないか?」という空気さえ生じた。

そして、河野は手応えを感じながら6Rを迎え、勝負を決めきる思いでプレスを強めていき、会場もその姿を後押しした。

その時に井上尚弥が得意の左フックを3発河野に打ち込み、ダメージが蓄積されていた河野はついにキャンパスへ倒れ込んだ。

ダウンの後も河野はなかなか立ち上がることができず、審判のロングカウントにより試合は再開されたもののすぐさま追い討ちをかけてきた井上尚弥の前にどうすることも出来ず、再びキャンパスに倒れ込みTKOによる試合終了となった。

井上にとっての河野戦の意味とは

この試合をハイライトシーンや結果報道だけで見た際には、「井上尚弥おきまりのKO劇」で完結してしまうかもしれないが、ベストコンディションの井上をここまで追い詰めた河野も賞賛されるべき内容だった。

その上でタフな河野に勝利を収めた井上尚弥はやはり怪物であり、その実力を遺憾無く証明して見せた。

勝者は敗者の想いまで背負って戦わなければならない

と言われるが、井上尚弥はこの試合以降、試合中に相手に隙を見せる時間帯が極端に減少したように思える。

その姿からは この打ち合いで河野からなにかを伝えられたような気がしてならない。WBSS決勝はもちろん、今後も日本ボクシング界が足を踏み入れたことのない世界に井上は進出していくと思うが、ぜひ一度「井上尚弥vs河野公平」の試合をチェックしてほしいと思う。

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