柔道の寝技で、片足だけで相手を返す方法を研究

私の進学した大学は寝技に力を入れており、稽古でも寝技の乱取に時間を割いていました。

それは監督の寝技重視の考えのもとに行われていました。大学生にまでなると、立技の技術を向上させるよりも、寝技の技術を向上させる方が効率的であると考えたそうです。

確かに、立技の方が圧倒的に見栄えが良く、投げたり投げられたりの方が白熱もします。練習を見る方もする方も立技の練習の方が楽しいはずです。実際私自身も立技の方が好きでした。

しかし、大学に進学すると、自分よりも強い人や技術力の高い人が山のようにいます。立技には限界があるとその時気がつきました。その中で勝ち残っていくためには、やはり寝技を強化するしかないと思いました。

片足の力だけで返す方法を研究

寝技を研究する中で、自分に合っていた技は下から相手を引き込んで返すというものでした。

私は大学3回生の頃に、軸足の靭帯を断裂してしまい、立技の練習が困難になりました。その時に片方の足の力だけでどうにか返す方法はないかと考えたときに、引き込みなら片方の足だけを使って返すことができると思ったのです。

片方の足だけで相手を返すためには、上半身と腕の力を最大限に使わなければなりませんが、勢いと手首の力を使えば、片足だけで返すことが可能だと気がつきました。私が研究した引き込みは相手が我慢すればするほど効いてくるのが特長です。

下から引き込む方法

通常の引き込みでは、四つん這いの相手の帯を持ち、上に持ち上げて懐部分にスペースを作り、そこへ潜り込んで勢いを利用して相手を返す、というものです。

一方、下から引き込む方法だと相手の足を持って返したり、我慢されたときは反対側にひっくり返したりなど、様々なパターンに対応もできます。私は軸足が使えなかったので、自分の右足で相手をコントロールしました。その場合は相手の左側から潜りこみます。

基本的な引き込みは相手の懐部分に深く潜りこみますが、私の引き込みはなるべく遠くから相手を徐々に引きつけていくというものでした。その際に重要になってくるのが、自分の右手です。

左手は相手の帯を持っていますが、右手は相手の顎の下から襟を持ちます。大学柔道の選手の多くは、引き込まれるとわかった場合、おそらくうつ伏せに伸びて我慢しようとするはずです。

喉仏に苦痛を与え、顎を上げさせる

相手が伸びた方がこの技はやりやすいので、好都合なのです。相手が伸びてから自分の右手の甲を使い、相手の顎を上げるように手首を返していきます。そうすると畳と相手の間にスペースができてくるので、少しずつ相手を自分の方へよせてきます。相手の懐に潜り込む必要はありません。相手の顎が完全に上がったタイミングで、相手を返していきます。

右足を相手の股の下から入れていき、相手を返していきます。相手が返ったときに勢いでそのまままたうつ伏せになってしまうので、右足は相手の左足に掛けたままにします。相手の喉仏を潰すようにすれば、痛みを我慢できずに相手はひっくり返ります。

手首を返したり戻したりすることで、相手の顎や首に痛みがくるので、相手の様子を見ながら返してみてください。うまくできるようになると、引き込んで返すタイミングがよくわかるようになります。引き込みに自信が持てると、寝技の練習も楽しくなり、どんどん強くなっていきます。立技の技術向上にはセンスが必要ですが、寝技は練習すればするほど上達するので、立技では敵わなくとも、寝技で勝機を見出せます。

この技の注意点は、返すタイミングを逃さないことです。これは何度も練習し、実践して失敗しないとわかりません。たくさん反復してください。手首の力が強い人の方が、上手く返せると思います。重量級よりも中量級・軽量級の人の方が身軽なので、向いているかもしれません。焦って返そうとすると、反対に相手に攻められてしまうので、じっくり攻めることを意識してみてください。