当時私は、大学柔道部に所属しており日々練習に励んでいました。通常の練習だけではなく、練習後の筋力トレーニングにも励み、体重の2倍以上の重量を扱えるほど筋力を獲得しました。
しかし、試合ではなぜか相手に簡単に投げられてしまうのです。相手に力負けをすることはなかったのですが、簡単に体が飛んでしまうのです。
この問題には、筋力以外に理由があると考えた私は、その理由を見つけるために柔道整復師やトレーナーに積極的に話を聞きに行きました。
力負けしていなくても投げられる理由
その結果、自分の弱点を見つけることができたのです。
その弱点とは、体に対する足の小ささでした。当時の私は身長177cm体重98kg程ありました。しかし、体重に対して足の長さは24.5cmしかなかったのです。
この足の大きさは成人男性の平均サイズ以下になります。体重に対して足のサイズが短いがゆえに、体の安定が悪くなっているのだろうとのことでした。
体が安定する適正体重は80kg前後だろうとのアドバイスをいただきました。なぜこれまで足の大きさに気がつかなかったかというと、足の縦の長さに対して横幅が広く、横幅に合わせて靴を選んでいたため縦の長さに気が付かなかったのです。
また、トレーナーからは、柔道では相手が得意な体勢に入らせないように常に動き続けたほうがいいというアドバイスもいただきました。自分の弱点が分かった私は、弱点を克服するために、適正体重への減量と練習内容の工夫を始めたのです。
投げられにくくするためのトレーニング
最優先事項であるのは減量でしたが、日々の練習がハードなため簡単な食事制限をするだけで充分でした。約2カ月で体重を10kg以上減量し、82kgまで体重を落とすことができました。
減量することで体が軽くなり、重心の移動がスムーズになったため、投げられにくくなりました。しかし、より投げられにくくするために3点を意識してトレーニングに励みました。
トレーニング1.上半身と下半身の連動
まずは、重心の安定です。不安定な体勢でも体を安定させることができるように、上半身と下半身の連動を強化するトレーニングが重要だと考えました。
具体的には、ケトルベルを持った片足スクワットやランジスクワット、バランスボールを使ったトレーニングを行いました。
トレーニング2.効率のよい重心移動
2点目は素早い重心の移動です。受けだけではなく攻めの際も重心の素早い移動ができれば、技の効果は倍増します。重心移動の効率的なトレーニング方法を探していたところ、たまたまブレイクダンスがテレビで特集されていました。
様々なアクロバティックな動きを繰りだすのにもかかわらず、決して体勢が崩れることのないダンスをみた私は、ブレイクダンスこそ私が求めていたトレーニングだと考え、すぐに友人に連絡し友人が所属するダンスチームで練習させてもらえることになりました。
そのチームでダンスの動きを学び、重心の移動を学びました。
トレーニング3.心肺機能の強化
3点目は体力の強化です。トレーナーからいただいたアドバイスを元に、他選手より常に動き続けられる心肺機能を獲得するため、HIIT(ハイインテンシティ・インターバルトレーニング)やサーキットトレーニングを行うことで心肺機能の向上に努めました。
これらの練習の結果、自分はどの体勢で重心がとりやすく、とりにくいのかが分かりました。
自分が重心をとりやすい体勢を常にキープすること、逆に苦手な体勢になる時間を少しでも短くすることを心がけることによって、当初悩んでいた投げられやすさを克服することができました。
自分の体の特徴や適正な体重をしっかりと客観的に理解すること。体の長所と短所を見極め、長所を伸ばしつつ短所を克服することが重要であり、それよってパフォーマンスを向上させることができると分かりました。
(文・孤高の柔道家)