中学から剣道を始め、それなりに剣道の動きができるようになった中学2年生のときです。
試合でも練習でも私は面を打つたびに相手から応じ技を決められるようになっていました。
当時私が住んでいたところは中学から剣道を始めるひとが多い地域で、周囲と剣道歴に差はありませんでした。
周りになぜ私は面を打つと面返し胴や出小手を決められるのかと聞いても、
「打ってくるタイミングがわかるから」
と言われるだけ。そのせいでそれまで大会では確実にレギュラー入りしていたのに大会前で補欠に落とされてしまいました。
剣道に対する熱量が自分の中でさめていく日々でした。
高身長は剣道に生かせる?
そんなとき学校で身体測定があり、私は自分が学校でいちばん背が高いことを知りました。
保健室の先生が「スポーツ万能な体格だね」とほめてくれたのです。
そのときにひらめきました。「自分の体格を生かした剣道をすれば勝てるのではないか」と。
周囲の人間より身長が高いということは、跳躍力も高いということ。そこからはひたすら「遠い間合いからの飛び込み面」を練習しました。
遠間からの飛び込み面の練習方法
練習を始めた最初のころは全く相手の面に届かず、面打ちのフォームでさえ初心者と変わらないものに成り下がるほどでした。
そこで、「いま自分が届く限界の遠間で面打ちの練習をしよう」と目標を立てて、その距離で面打ちが届いたらまた少し遠くの間合いから面打ちの練習というふうに徐々に距離を伸ばしていきました。
この練習は足にかなり負担が掛かるので当時の私は毎日足が筋肉痛状態でした。
そんな私の姿を見て周りの剣道部員は「あんな距離から打てるはずがない」と笑っていたのをいまでも覚えています。
しかし、スタミナも力も人並みで周囲の人間と圧倒的な差があるといったら身長差しかない私は、筋肉痛にも負けず辛抱強くこの遠間からの面打ちを練習しました。
遠間からの飛び込み面のコツ
遠間からの面打ちを練習するコツは、
- 自分の限界の間合いを知る
- そこから少しずつ間合いを伸ばす
地味ですが、この2点に尽きます。
そして練習で遠間からの面打ちが決まるようになったら、近い間合いと遠い間合いで使い分けて面を打つことにより自分の剣道の幅を広げていくようにします。
レギュラー争いの校内試合
遠間からの面打ちを練習して3カ月ほど経過したある日のことです。
監督から今回の団体戦は校内試合を行って実力主義でレギュラーを決めていくと伝えられました。私は不安で仕方ありませんでした。
なぜならレギュラー時代の私は実力ではなく、部活に休むことなく参加している姿勢を評価されてレギュラーになっていたからです。
面打ちのスピードに変化が
「今回もレギュラーになれないかも」とナーバスな雰囲気で始まった校内試合。しかし、いざ試合をしていくと、それまで決まらなかった面打ちが決まるのです。
「相手が下級生だからではないか」と思ったりもしましたが、同級生にも決まるのです。遠間からの面打ちの稽古のおかげで脚力が鍛えられ、面打ちのスピードが格段に上がっていました。
部内でいちばん強い先輩との試合
そして部内でいちばん強い先輩と試合をするときがきました。それまでの私の勝ち数はレギュラー入りするにはぎりぎり足りない数でした。
「レギュラーになるためにはこの先輩に勝つしかない」と思い果敢に攻めていきました。
しかし、技が決まるどころか逆に技を応じられて先に胴を一本先取されてしまいました。技も打ち尽くしここまでかと思いましたが、イチかバチかで遠い間合いから思い切って飛び込み面を打ちました。
その瞬間私の色の旗が3本上がり先輩に面を決めることができたのです。その試合は延長戦に入り結果的には負けてしまいましたが、自身の成長を感じることができて興奮したのを覚えています。
勝ち数が足らずレギュラー入りを諦めていましたが、監督から、「お前の面打ちは試合で使える」と評価を受けて私はレギュラーに返り咲くことができました。