2001年といえば世の中はK-1ブームの真っ只中。外国人選手も多く活躍し、日本人でも格闘家が、アイドルのような存在だったころ。
地上波でも、普通に格闘家がバラエティ番組に出演していた。
格闘家が雑誌のモデルをつとめる時代
特に佐藤ルミナ、宇野薫、桜井マッハ速人など、丹精な見た目とファッションセンスが冴えた選手が目立ち、ストリートカルチャーの延長上に格闘技があるような時代で、ファッション雑誌のモデルをつとめる格闘家もいた。
なかでも、アパレルブランドなどとも積極的にコラボレーションをしていたのが修斗。
そんなスター選手が多く存在する修斗を、どうしても自分の目で見てみたいと思い、当時、自分の周りには格闘技好きはあまりいなかったので、一人で見に行った。
華やかなKOが見られる打撃技だけでなく、関節技などで落とす試合を初めて見て、鳥肌が立った。
全く動きがないようで、しっかりと締上げていて、それで崩れ落ちる様子は、かなり衝撃も大きかった。
初めての修斗観戦が五味隆典vs佐藤ルミナだった
2001年12月 東京ベイNKホールで行なわれた、五味隆典選手VS佐藤ルミナ選手のウェルター級王座決定戦。後の様々な専門誌でも、評価が高かったが、「だれもが待ち望んだウェルター級王座決定戦」とも言われていた。後にDVD化され、販売されるほどの名勝負だ。
この日の対戦カードは、全体的にも華やかで、タイトルマッチ以外の試合にも、戸井田カツヤ選手や、桜井マッハ速人選手といった、人気選手が参戦していた。
後に火の玉BOYとしてプライドで活躍し、UFCにも参戦する五味隆典選手VS当時既に人気選手だった佐藤ルミナ選手の試合。
その頃はまだ、五味選手は木口道場のキッズクラスのインストラクターをしていて、プロ格闘家としては、まだまだ無名だった。
対する佐藤ルミナ選手は、丹精なルックスと、戦績、交友関係も華やかな人気選手だった。恐らく、多くのファンは、佐藤ルミナのKOシーンを見るために来場していたはず。
まだまだ無名だった五味が勝つ大金星
五味選手は、佐藤ルミナという高い高い壁を目の前にしても、全く怯むことも遠慮することもなく、むしろ、無名だからこその怖い物知らずの勢いで、どんどんせめていく。
世間的にも、熱心な修斗ファン以外は、恐らくなんとなく名前を聞いたことがある程度の選手。五味選手自身も、それをよく分かっていたように感じた。とにかく勢いが止まらなかった。
一方、誰もが勝つと思っていた佐藤ルミナ選手(もしかすると本人も)は、多少油断していたかもしれない。もちろん、人気選手であり、誰もが勝ち、しかも恐らくOKを見にきていることも本人が一番分かっていたであろう試合でのまさかの負け。
その後、佐藤ルミナ選手は、地元に自身のジムを立ち上げ選手育成に力を注ぎ、一方の五味選手は、世界を舞台に戦うことになる。
2人を応援する声援の違い
自分自身も、修斗を生観戦するのが初めてで、しかも一人で格闘技会場で観戦することも初めてだったので特に心に残っているのかもしれない。
実をいうと、私の目当ては当時の人気選手だった佐藤ルミナ選手。私だけでなく、多くの女性ファンが彼を見ようと会場に駆けつけていた。
一方、五味選手は子ども達の先生をしていたので、教え子の子ども達が多く駆けつけ、「せんせ~!!せんせ~!」と可愛らしい声援を送っていた。
それぞれの選手に声援を送るファンの声も全く違い、そのときのそれぞれの選手の状況も全く違った。そして、子ども達が応援するなか、五味選手が勝った。華麗な勝ち方ではなかったかもしれないが、格闘技の未来への扉が開けたようにも思えた一戦だったと思う。