アマチュア総合格闘技で当時10~15戦していた僕の相手は、まだ5戦以下の15歳。中学3年生だった。
年齢差と階級差のある試合
自分の階級は65.8Kg以下のフェザー級。相手は今まで56.7Kg以下のフライ級で試合しており、いきなり2階級を飛び越えてフェザー級での試合をすることになった。
中学生とはいっても格闘技で活躍している選手で、自分も彼のことは小学生の頃から知っていた。若い子の中、軽量級の中ではそこそこ強いイメージだったが、まさか自分が闘うことになるとは思っていなかった。
年齢も階級もここまで違うと、全てのシーンで有利になるイメージしか沸かない。正直なところ余裕を感じており、練習もそれなりの内容になっていた。
しかし、実際に行った試合は思い描いていた内容とはかけ離れていた。
この日行った総合格闘技ルールの概要
総合格闘技ルールで5分2ラウンド。
総合格闘技のルールを簡単に説明すると指の出たナックルが非常に薄いオープンフィンガーグローブで闘う競技で、パンチ、キック、組技、寝技等ほぼなんでもありなルールとなっている。
アマチュアの試合だと寝た状態でのパウンド(顔面へのパンチ)は禁止される事が多いが、今回の試合は両者の希望からパウンドが認められる試合だった。
自分の方が体重は重たかったので、
「寝技になったら上をとってパウンドでKO勝ちできるだろう」
と余裕に考えている中試合は始まった。
ファーストコンタクト
最初はお互い相手の出方を伺うように間合いを取り合った。
距離が近くなって、パンチの打ち合いになった時、僕のパンチが力んでいたのか大振りだったのか、相手はそれをしっかりかわし、コンパクトなボクシングで真っ直ぐなパンチを放ってきた。
僕はこれを数発顔面に被弾し、これですっかり自分の中にあったナメていた気持ちが吹っ飛び、よく聞くワードだが「やらなきゃやられる」と思った。
パウンドに対する巧みなカウンターを食らう
そこからの打撃戦は今でも覚えているが本当に楽しいと感じながらやっていた。
総合格闘技ならではの遠い距離感で、お互いフェイントを使いながらパンチとキックのコンビネーション技をやり合う。もちろん痛い。
そんな中ふと考えていた作戦を思い出した。寝技に持ち込んで上をとりパウンドKOを狙う作戦だ。それを思い出し1R終盤、打撃戦の中で咄嗟にタックルにいき相手を倒して上になった。
これでパウンドだ!とばかりに腕を振りかざした瞬間、相手の片足が自分の肩の上にきた。三角締めだ。
完全にパウンドを打つことに集中しすぎて、相手の動きに気付いていなかった。三角締めは自分の得意技でもあったため、対処の仕方もそれなりに自信があったが、相手は思いのほか上手かった。
この時点で残り時間が1分程だったことを覚えているが、中々三角締めの形から逃げることができず徐々に頸動脈が絞められていく。途中意識が遠のいていったが「絶対ここで負けたくない!」と思い、1R終了のゴングが鳴るまでただただ気合で耐えた。
2R終了のゴング…試合結果は?
ゴングに救われる形にはなったが、約1分間呼吸をしっかりできていない。インターバル中は気絶していたと言っても過言ではない。スタミナはもう切れている。
2Rの前半は守りに入り、スタミナ回復に努める。後半に勝負を持って行く狙いだ。
1R同様の打撃戦、組み、寝技と全てできることをやり合った。お互いの顔は腫れ上がっていたが、とても高揚していた。
そして2R終了のゴングが鳴り試合終了となった。試合結果は判定でドロー。自分にとっては辛い試合内容でもあった。それでも試合中に楽しいと思えた。
なお相手の選手は現在プロの舞台で闘い、世界の舞台での活躍が期待されている。
彼とは本当にいい試合ができたと思っている。僕自身も精進しなければ。
(文・shu.co)