堀口恭二が朝倉海に負けた!特殊な事情?伝統空手の苦手なスタイル?

2019年8月、日本の総合格闘技界に衝撃が走りました。

UFCからRIZINへ主戦場を移し、並みいる強豪を全員倒してきた堀口恭二選手がまさかのKO負け。しかも相手はノンランカーの朝倉海選手。

それまではRIZINバンタム級四天王と呼ばれていた、元谷友貴、佐々木憂流迦、扇久保博正、石渡伸太郎、この4人の中から堀口選手を倒すのは誰だ?と言われてきたため、予想外の試合結果に会場は異様な空気になっていました。

堀口恭二VS朝倉海の特殊な事情

堀口恭二VS朝倉海という試合が組まれたのには理由があります。

RIZINは毎年7月8月と2カ月連続で大会を開催するため、7月のRIZIN17と8月のRIZIN18でそれぞれ目玉のメインカードを用意しなければならなかった背景がありました。

7月のRIZIN17では、RIZIN四天王の元谷友貴VS扇久保博正、佐々木憂流迦VS石渡伸太郎というカードが組まれ、四天王同士の潰し合いが始まり、この流れは「ROAD TO 堀口」と呼ばれました。

この潰し合いの勝者が、堀口とベルトをかけて対戦する流れだったのですが、8月のRIZIN18で目玉カードが中々決まらず、絞り出した上で組まれたのが堀口恭二VS朝倉海という、「ROAD TO 堀口」の流れから少し外れたカードでした。

堀口圧勝とまでは言い切れなかった理由

試合が決まった当初は、

「朝倉海の実力ではまだ勝てないだろう」

「堀口の体を休ませるための試合だ」

といった声が度々耳にされていました。

しかし、「堀口圧勝」と簡単に言い切れるものではありませんでした。

この対戦は、朝倉海選手の地元開催で行われる試合。当然、朝倉海選手の活躍に対する期待も大きかったでしょう。

そして何より、朝倉海選手が堀口選手の苦手なファイトスタイルではないかという予想もあり、堀口選手の圧勝を予想するには一つ決め手を欠いていたのです。

伝統派空手が苦手とするファイトスタイル?

堀口選手の苦手とするタイプというのは、ガンガン前に出て間合いを潰してくるタイプの選手です。

2017年の大晦日には、そのようなタイプのマネル・ケイプ選手と戦い、かなり苦戦を強いられました。

元々、163センチと小柄な堀口選手ですが、伝統空手の独特の遠い間合いから、フットワークを活かして一瞬で距離を詰め、打撃をヒットさせるというファイトスタイルで、体格をカバーしてきました。

そのため、前に出て間合いを潰してくるような選手には苦戦することがあったのです。そして、朝倉海選手はというと、このガンガン前に出る戦い方ができる選手でした。

朝倉海のカウンターが冴える

いよいよ試合が始まり、堀口選手はいつものように軽快なフットワークからパンチをヒットさせ、開始数秒で朝倉選手の顔からは出血が見られました。

朝倉選手はというと、いつもの前に出るような展開ではなく、静かな立ち上がり。

堀口選手を苦戦させるであろう、「朝倉選手がガンガン前に出る試合展開」とはなりませんでした。しかし朝倉選手からは不気味なオーラが出ています。

そして堀口選手の得意な攻撃、遠い間合いから飛び込んでの右フックを放った瞬間、朝倉選手の右ストレートがカウンターでヒットし、堀口選手が崩れ落ちました。

なんとかリングサイドにエスケープし、追撃をする朝倉選手に組み付いてグランドの展開に持ち込もうとする堀口選手でしたが、朝倉選手は堀口選手のタックルに合わせて膝蹴りのカウンターをヒットさせ、全く攻撃の手を止めません。

そしてフラフラの状態の堀口選手に朝倉選手がパンチをヒットさせ、試合終了。

なんと試合時間わずか1分半で、RIZINバンタム級チャンピオンの堀口選手がKO負けを喫してしまいました。

朝倉海選手は、前に出て伝統空手の遠い間合いを潰すのではなく、伝統空手の得意分野でもあるカウンターによって試合を組み立てていたのです。

堀口恭二の幻想を打ち破る朝倉兄弟の戦略

朝倉選手は試合後に、

「堀口選手は遠い距離から右フックを打つとき、顔が左に傾く癖がある。そこにカウンターのストレートを合わせる練習をしてきた」

「良いパンチが入ったあとはタックルで組み付く流れがあるので、そこに膝蹴りを合わせることを想定してきた」

と話し、全てが想定内、予定通りだったと語っていました。

対堀口戦の戦略については、朝倉兄弟自身によるユーチューブ動画で詳しく解説されています。その中に出てくる印象的なフレーズに、「カウンターのカウンター」「フェイントにフェイントを返す」といったものがあります。また「堀口選手に対する幻想」という言葉もあります。

堀口選手と対戦する選手は、その独特な伝統空手スタイルを警戒します。堀口選手が得意とする試合展開に付き合いたくないと普通なら考えるところでしょう。

朝倉海選手が勝利した後だから言えることなのですが、そこには堀口選手に対する過度な恐れ、朝倉兄弟の言うところの幻想があったのかもしれません。

朝倉兄弟の戦略は、相手が得意とするのと同じ動き(フェイント、カウンター)を返していく、その上で相手を凌駕する、というものでした。

堀口選手のファイトスタイルに付き合った上での計算された勝利。それには、相手の穴を的確に突く知恵と、それを実行する度胸の両方が求められました。

さて、その後の展開ですが、2019年大晦日のRIZINで、「堀口VS朝倉2」が組まれましたが、堀口選手の怪我でこのカードは消滅。

ベラトールのバンタム級を制し、2冠王者となった年にこの負けと怪我を味わい、まさに天国から地獄をみた堀口選手でしたが、怪我からの復帰、そして朝倉選手との再戦と、今後も大注目の選手であることは、間違いありません。

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2000年代に自衛隊に在籍しながらMMA(総合格闘技)に取り組んでいました。 私はもともと剣道と伝統派空手をやっていたので打撃は得意だったのですが、接近してからの打ち合いのコツがつかめずにいました。 剣道も伝統派空手もサイドステ...