中村優作は日本拳法をベースとしたファイターだ。
修斗アマチュア大会を制した後、DEEPでキャリアを重ね、『RIZIN.10』(2018年5月6日)では那須川天心とキックボクシングルールで対戦している。
相手の土俵で戦う形となったこともあり、試合は終始、那須川天心にリードされ、中村優作のKO負けという結果になった。
遠い距離からの飛び込みにカウンターを合わせられたり、苦し紛れにタックルを出してしまったりと、中村は苦戦を強いられた。この試合で中村は鼻をひどく負傷してしまう。
試合展開を見る限り、キックボクシングルールにおいて両者の間にはかなりの差があるように思えた。
しかし、ほかならぬ那須川天心が中村優作のファイトスタイルを認めていたことが分かった。
ユーチューブでの中村優作×那須川天心のコラボ企画
2020年8月9日に投稿されたユーチューブ動画「【ガチ】中村優作選手と日本拳法で戦ってみた」(那須川天心チャンネル)では、かつては拳をまじえた中村優作と那須川天心のコラボを見ることができる。
今回は、那須川天心が中村優作の土俵である日本拳法に挑戦する形だ。
日本拳法は空手道(糸東流)と柔道をミックスしたような武道で、自衛隊の徒手空拳はこの日本拳法をベースにしていると言われている。
試合はパンチ、キック、金的、投げ、倒してからの打撃(頭部への膝蹴りもあり!)、関節技が認められたルールとなっており、総合格闘技色が非常に強い。
勝敗は剣道と似た防具を付けて、ポイント制で競われる。
那須川天心が驚いた日本拳法の距離感
那須川天心は、中村優作の他の選手とは異なる遠い距離感に驚いたと語っている。
一般に、MMAの方がキックボクシングよりも距離が遠い。那須川天心は総合ルールも経験しているのでMMAの距離感については当然熟知している。その上で、中村の距離を「遠い」と感じたのだから、日本拳法の距離はMMAよりもさらに遠いということなのだろう。
ガチバトル!日本拳法ルールでの那須川天心vs中村優作
日本拳法ルールでのガチバトルが行われた。
通常、格闘家同士のコラボ企画では安全に配慮した軽めのスパーリングで行うことが多いと思う。
今回の動画のタイトルに「ガチ」と書かれている。
普通なら仮に「ガチ」と書かれていても、実際には軽めのスパーになるわけだが、今回は日本拳法ルールなので少し事情が異なる。
日本拳法は防具を付けているので、パンチや蹴りが当たることによる外傷の危険性はほとんどない。
だから、繰り出す打撃の強さという点では、軽めのスパーリングに比べて、かなり「ガチ」に近いのは本当だと思う。
さて、そんな勝負が2本先取した方が勝ちという日本拳法ルールで行われた。
攻防は間合いの駆け引きから始まった。手数という点では、強弱織り交ぜて互いに打撃を出し合うキックボクシングよりも、狙いすました一発を放つMMAに近いという印象だ。
1本目は遠間から飛び込んでの突きで中村が先取。
中村は続いて突き技で2本目を連取するが、これを「軽い」と中村自身が申告して取り消しとなった。
天心は中村の顔面をハイキックでかすめるという見どころを作るがこれはポイントにはならず。
最後は、中村のボディへの前蹴りが1本となり、天使を2-0で圧倒する結果となった。
中村優作という選手を知ることができた
動画を見て、中村優作という選手が想像していた以上にユーモラスな人だということを知った。
真剣勝負のピリピリした試合もいいけれど、こんな風に、かつて闘った選手同士の友情が垣間見れる動画は見ていて本当に気持ちがいい。
動画の冒頭で中村優作は、
「ありがとう!」
「日拳を広めてくれてうれしい」
と言っていた。
格闘家の仕事は試合で勝つことだけれど、勝つという目的以外にも、自らのファイトスタイルに対するこだわりや愛着が練習のモチベーションになっているのだと思う。
日本拳法のように他とは違うバックボーンを持つ選手はなおのこと、自分が実践する武道や流派への思い入れは強いはず。特に武道の道場では少年部の指導をしている人もいて、道場でお兄さん的な存在になっていたりもする。
那須川天心が日本拳法の道場に来てくれてうれしい、というのは中村優作の素直な気持ちなのだろう。