2019年12月29日、アメリカの総合格闘技団体ベラトール(BELLATOR)が日本で開催されました。
試合結果は…ヒョードル勝利!
日本MMAファン涙モノのビッグカードが、ベラトールの代表スコット・コーカーが用意した「エメリヤーエンコ・ヒョードルvsクイントン・ランペイジ・ジャクソン」のPRIDEレジェンド対決です。
PRIDEのテーマ曲で入場するランペイジ・ジャクソン! ゾクゾクする雰囲気で試合がスタート。
結果は、全盛期を彷彿とさせる鋭い踏み込みと打撃で、ヒョードルがランペイジ・ジャクソンを圧倒して勝利。有終の美を飾ってくれました。
ジャブ、そして連打と、打撃で優位に立ったヒョードル。最後は右フックでランペイジ・ジャクソンをKOしました。
ヒョードルの動きからは、この日のためにきっちり仕上げてきたことがうかがえます。
ふたを開けてみれば早めの決着でしたが対戦相手のランペイジも強敵です。当然、簡単に勝たせてくれる相手ではありません。
近年のヒョードルはかつてのように勝って当たり前の選手ではなくなっていました。ヒョードルはどのような不安材料を克服し、この日の勝利を手にしたのでしょうか?
ヒョードルとランペイジのプライド以降の足どり、そして、全盛期とは異なるヒョードルの今のコンディションを振り返り、ヒョードルの勝利の重さを受け止めたいと思います。
下記は試合前に書かれた試合展開予想になります。まだ決着が分からない状況で書かれています。
ヒョードルの試合は厳しいものになるだろうと思われました。それはなぜでしょうか?
エメリヤーエンコ・ヒョードルvsクイントン・ランペイジ・ジャクソンのPRIDEレジェンド対決
ヒョードルとジャクソンは、まだMMAの中心が日本のPRIDEだった頃、その人気を支えてきた二人です。
当時、ヒョードルはPRIDEヘビー級王者で全人類最強の男と呼ばれていました。
対するジャクソンは、ヒョードルより1階級下のミドル級(現在のライトヘビー級)で戦っており、名勝負であったヴァンダレイ・シウバ戦や、ヒカルド・アローナ戦が印象に残っています。
プライド消滅後のヒョードルの足どり
ヒョードルはPRIDE消滅後、いくつかの団体を経た後ストライクフォースという団体で戦いを続け、2012年に1度引退しました。
しかし2015年に再びMMAに復帰し、それからはベラトールを主戦場にし、2018年に行われた世界ヘビー級トーナメントでは、元UFC王者であったフランク・ミア、更にチェール・ソネンと強豪を倒していき、決勝戦までたどり着きました。
決勝戦ではライアン・ベイダーに負けてしまいましたが、このトーナメントで、かつて人類最強と呼ばれていたに相応しい、コンプリートファイターであることを証明しました。
ランペイジ、プライドからUFC王者へ
対するジャクソンは、PRIDEが消滅する少し前に離脱し、主戦場をUFCに移しました。UFCに移ってからは、当時ライトヘビー級チャンピオンであったチャック・リデルを倒し、UFCの王者にまで上り詰めました。
その後はPRIDE消滅後に選手がUFCへ流れ、選手層の厚くなったUFCで勝ち負けを繰り返し、ベラトールとUFCの間を行き来した後、現在はベラトールのファイターとして戦っています。
ヒョードル全盛期の動きを封じる金網の攻防
この試合のカギを握るのは、戦う場所がリングではなくゲージ(金網)であることと、両者のコンディションです。
ヒョードルはリングでもゲージでも戦い方を大きく変えることがなかったため、どちらが得意でどちらが不得意であるかはわかっていませんが、言い換えるとゲージという空間をうまく使ってこなかったとも言えます。
ヒョードルは、リングでは得意のロシアンフックからいっきに相手に組み付き、テイクダウンからグランドの展開にもっていき、容赦ないパウンドを食らわせ、隙あらば腕十字やアームロックで相手からKOや一本を奪ってきました。
しかし、PRIDE消滅後はゲージでの試合が続き、ヒョードルが得意とする一連の動きが、ゲージの広さゆえに影を潜めていました。
距離を詰めようとしても相手に逃げられ、中々テイクダウンが取れないため、どうしてもスタンドの展開がメインになってしまっています。
PRIDE消滅後にKO負けが増えたのも、間違いなくこのことが影響しています。
対するジャクソンはというと、ヒョードルよりも早くゲージでの戦いを始め、ゲージで有利な、いわゆるボクシング&レスリングのスキルを高めてきました。
今回の試合は、ジャクソンのゲージスキルをいかにしてヒョードルが攻略していくかも見所の一つです。
変らないヒョードルと、適応するランペイジの戦い
また、年齢によるコンディションの変化も、この試合の注目ポイントです。
全盛期のPRIDEを支えてきただけあって、両者共に40歳を超えており(ヒョードル43歳、ジャクソン41歳)、試合当日までにどれだけコンディションを合わせてくるかが鍵を握ります。
RIZINの榊原代表が「ジャクソンは年齢による体の衰えを、技術でカバーしている」と語るように、一見パワーファイターであるかのように思われがちなジャクソンですが、確かなファイトスキルを持っています。
一方ヒョードルは、度重なる拳の骨折によるパンチ力の低下や、ハンドスピードの衰えが指摘されており、それに対してファイトスタイルにもそれほど変化がみられていません。
ヒョードルはパンチを当てられるのか?
とくにハンドスピードの衰えが問題視されている理由があります。
ヒョードルが全盛期の頃は、相手が先にパンチを放っても、後で出したヒョードルのパンチの方が先に相手へ届いていました。
ヒョードルのカウンターは独特で、相手の放つパンチに対してヒョードル自身が向かっていき、しっかり目でパンチの軌道を確認しながら距離を潰し、相手に自分のパンチをヒットさせてきました。
しかし、体の衰えがあるのか、最近ではこの技術を実行しようとするものの、向かっていく際に相手のパンチを被弾し、そのままノックアウト負けをしてしまう展開が増えています。
このような不安材料はあるものの、やはりヒョードルのファンが見たいのは、ランペイジのゲージスキルに勢いをそがれることなく、強烈なパンチを繰り出すヒョードルの姿でしょう。
この二人の対決には、一部で「PRIDEの忘れ物」と呼ばれている通り、勝負を超えたエモーショナルな部分があります。
ヒョードル自身も「日本ラストマッチになる」と言っており、かつて人類最強と呼ばれた男がどのような闘いを見せてくれるのか注目です。