日本にプロレスが発祥して70年近くになる。戦後プロレス大ブームになり、80年代のブーム、そして最近の新日本プロレスのブーム。
何度か危ない時期もあったが、プロレスが盛り上がるのは長年のファンとしてはうれしい限りだ。
80年代からプロレスを見ている自分に大きなインパクトを与えたのは、初代タイガーマスクの登場だった。
初代タイガーマスク登場をリアルタイムで経験
僕が中1の春、「おい、新聞みろよ。プロレスのところ、タイガーマスクって書いてあるぞ!」と兄。
その一言から、僕のプロレス人生が始まった。それまでもテレビで放送されているのをチラチラ見る程度でほとんどレスラーの名前も覚えていなかった。
ただ、アニメのタイガーマスクの放送はクラスの男子の全員が見るくらい大人気だった。そのタイガーマスクの名前が金曜午後8時の欄にあった。それまでのプロレスのイメージは、アントニオ猪木だった。黒いパンツ一枚で戦うのがプロレスだった。
最初はかっこいいと思わなかったタイガーマスク
夜になり我が家のテレビの前の特別リングサイドを兄と二人で陣取った。
「なんだこれ?」へんてこなマスクを被った選手が出てきた。これが最初の感想だった。
正直、かっこいいとは思えなかった。むしろ対戦相手のダイナマイトキッドの方がかっこいいと思った。
カンとゴングがなる。その瞬間に僕の頭の中にあったプロレスの定義がすべてガラガラと崩れた。黒パンツの男が組み合うスタートではなく、ピョンピョンとウサギ?のようにはねている着ぐるみのような覆面レスラーがいた。
佐山サトルの動きがアニメ「タイガーマスク」に重なる
そして、今までみたことのないようなキック!そうだ「アチョー」とは言わないがブルースリーのキックに酷似していた。
跳ねる動作が続き、そのたびに鞭のようなキックが飛ぶ。そして物凄いスピードで攻撃し、また相手の技を猫のような動作で切り返していく。
兄も僕も声が出なかった。
コーナーに相手を振って胸板を蹴りながら空中に一回転する。バク転なんか体操の選手くらいしかできないと思っていたが、テレビの覆面レスラーはだんだんとタイガーマスクになっていった。
そして、最大のインパクトを食らった技。ローリングソバットだ!
説明すると、垂直ジャンプからの空中回し蹴り。ローリングソバットは現代のプロレスの原点になる動きだ。
そして最後は原爆固め。この名称は今使うと不適切かもしれないが、初めて見たスープレックスだった。技をかけたままフォールする動作は初めて見た。
アニメのヒーローが現実に!
プロレスを見てはじめてショックを受けた。子供のころのヒーローが現実となった。たぶん今後の人生でもありえないだろう。実際40年近くたった今も現れていない。
次の日、学校へ行くとみんなタイガーマスクの話題だ。SNSもネットともない時代、最大のコミュニケーションツールは学校の休み時間。
クラスにはプロレスマニアもいていろいろなプロレス情報をもらった。新日本以外にもプロレス団体があることや、外国人のスター選手がいることも。
僕のプロレス熱が次から次へと開花していく。翌月からはプロレス雑誌をはじめて購入する。月刊プロレス、ゴング…まだタイガーマスクは載っていない。今は亡き「ビッグレスラー」という雑誌が僕がみた初めてのタイガーマスクのカラー写真だった。
その後のタイガーマスクの活躍は昭和プロレスファンならご存じのところ。次から次へとライバルが増え名勝負を繰り広げていく。
初めてタイガーマスクの試合を見たとき中学生だった僕は、なんと20年後プロレスのリングに覆面を被って登場することになるのだが、その話は別の機会に話します。
(文・GO)