2014年K-1ライト級世界トーナメント準決勝。
ゲーオ・ウィラサクレックvs久保優太による1戦は新生K-1発足以来初のムエタイ最強神話を魅せられた試合。
ゲーオ・ウィラサクレックはムエタイ格闘団体本場ルンピニーの王者に輝いた実績を持つ。
久しぶりの強いタイ人、ゲーオ・ウィラサクレック
ゲーオは1回戦、渾身のハイキックで対戦相手の額を陥没させるなど圧倒的なパワー力を見せつけ、2回戦にし進出した。
久しぶりに強いタイ人選手の登場によって会場はとんでもない強さの男がK-1に参戦したのだと確信した。
対する久保優太もライト級のベルトを過去に数多く獲得してきた実績を持つ。オランダキックボクシング団体のGLORYでも世界王者に輝くなど日本人最高峰のテクニシャンとして安定した試合展開で猛者を降してきた。
1回戦で久保は持ち前のテクニックで相手を完封し、判定で完勝。勢いのあるゲーオの圧力をも久保が技術で上回るか注目の1戦であったが、同時にゲーオの圧倒的強さは不穏な空気を漂わせた。
ゲーオ・ウィラサクレックvs久保優太の試合展開
1Rどっしり構えるゲーオ・ウィラサクレックに対し、柔らかな動きの久保優太。久保がフェイントや変則的打撃でゲーオのペースを乱していく。
久保の変則技が目立っているが、動じない様子のゲーオだ。ゲーオも重いローを放つ。
久保がじりじりプレッシャーをかけていく。しかしゲーオもパンチの飛び込み、蹴りの飛び込みで応戦する。久保は腕を伸ばしてそれをブロックするものの気を抜いたら瞬時にゲーオの打撃が畳みかけてくる。
ボクシングスキルでは久保が上回っているものの、ゲーオは下がらない。ゲーオはフックを放ちながら、ハイキックを見舞う。
蹴りをキャッチする久保だが、ゲーオの体の柔らかさ、体幹の強さは尋常ではない。
1R終了間際でゲーオがパンチから放ったローキックで久保の足が流れ、スリップ。ここでラウンド終了のゴングが鳴った。
試合主導権を握りたい久保だが、規格外のゲーオの攻撃力に試合中笑みを浮かべる場面もあった。2Rはパンチによる打撃の展開が見られた。
ゲーオはボクシング中心のファイトスタイルに変わった。当たれば倒れるが、目の良い久保はバックステップ、スウェーでなんとか躱す。
ゲーオもやや疲れてきたのか打撃のスピードが落ちてきたようだ。久保の打撃で頬が少し腫れている。
久保はワンツーを放ち、ゲーオはこれをスウェーで躱す。目が良く、ディフェンスも長けている両者。久保は前蹴りからストレートを伸ばし、ゲーオを捉えた。テクニックでは久保が上回り、ゲーオの打撃数は減ってきた。
再びインボクシングの距離に両者が入る。久保は左から右フックを放った。それに合わせてゲーオは右フックのクロスカウンターを合わせた。まともに攻撃をもらった久保は片膝をつき、そのまま背中から倒れ、天井を見上げた。
立てないと判断したレフェリーはそこで試合を止めた。
ブアカーオを彷彿とさせるゲーオ・ウィラサクレックの強さ
ゲーオ・ウィラサクレックの圧倒的強さは会場を震感させた。
かつてK-1で2度の王者に輝いたブアカーオを彷彿とさせた。ブアカーオの登場以降のK-1では彼に匹敵するタイ人ファイター現れなかった。
ブアカーオも2004年K-1世界トーナメント決勝戦で魔裟斗を破り、ムエタイ最強を世に知らしめた。
ゲーオはムエタイ最強伝説を再来させた。ゲーオの強みはタイ人離れしたパンチの打撃力。蹴りに特化しがちなムエタイファイターの概念を覆すその強さにある。ブアカーオ同様にパンチ力に秀でたムエタイ選手はそう多くない。
現在のKー1においても初参戦のムエタイ選手に苦戦する場面は度々見受けられる。その流れを再来させたゲーオの存在はかなり大きいと感じる。
ゲーオの活躍は忘れていた強いタイ人の幻想を思い起こさせた。若くして何百戦以上も戦っているムエタイ選手の中にはいつの時代も怪物が眠っているのだろう。
(文・Totty)