剣道地獄の「掛かり稽古流し」で、試合後半まで攻め続けるスタミナづくり

私はスタミナのない子供でした。小学校までは校内のマラソン大会ではいつもビリ。40人のクラスで40番が当たり前のようになっていました。

体も太っていましたが、相撲部で自分よりも体が大きく他の運動が苦手だった同級生より遅かったです。水泳でも25メートルを一本泳いだだけで息が上がり、2本目は泳げませんでした。

剣道でスタミナがないとどうなる?

小学校から剣道をしていましたが、私は身体能力が高くありませんでした。特にスタミナがなく、試合序盤では手数では負けることなく面や小手を打ち込めるのに、後半になると防戦一方になってしまい負けることが多かったです。先輩からは「開始30秒までは強いな(笑)」と言われていました。

スタミナが落ちてきた時の自分は、とにかく足が動かなくなってしまいます。前に出るときもゆったりと動いてしまい、そこを狙われることが多かったです。さらに、腕も上がらなくなり技が小さい動きからしか出せないため、相手のパワーに打ち負けてしまったり打突部位から外れてしまったりすることがありました。

さらに汗をよくかく体質のため、先輩方からは「まだ練習始まったばかりなのに、そんなバテてどうするんや」と怒られることが多くありました。

地獄のようだが効果のあった「掛かり稽古流し」

私が通っていた武道館では、基本練習が終わった後に少し休憩を入れ、試合感覚を養う練習(地稽古)を行なった後、「掛かり稽古流し」という練習を行なっていました。

どんな練習かというと、元立ち(技を受けてくれる人)が10人近く武道館の端から端に並びます。1人に対して20秒くらいで掛かり稽古(相手に面や小手をひたすら打ち込んでいく)を行い、太鼓がなると次の相手に休憩なしで向かっていきます。

ただ打ち込んでいくだけでも大変ですが、武道館が広かったので、次の相手に行くまで時間がかかります。全力ですり足をして向かっていくので、体力は限界近くまで行き、足の筋肉に疲労がたまり、とても辛かったです。

おまけに、相手も打ち込んでくるのでそれに負けないようにしなければなりませんでした。当然、相手ははじからはじまで移動することがないので比較的元気です。ハンデがあっても負けないように打ち込んで行こうとする精神面も鍛えることができました。練習が終わった後は肩で息が上がるのを通り越し、倒れそうになる事がしょっちゅうでした。これは私以外の部員も同じでした。

試合終盤はスタミナの差で勝負が決まる

掛かり稽古流しはとても辛い練習で、私も3、4人目くらいになるとバテていましたし倒れそうになることがありました。

冬にこの練習に取り組み、春くらいになった頃、今までの自分とは違うことに気づきました。

まず、技を打ち込んでいく回数が格段に多くなりました。試合後半になると防戦一方になっていた私でしたが、後半になっても面に飛び込んでいくことができ、その結果、練習試合の際に後半になっても技が決まることが多くなりました。

一番違いを感じたのは、春季大会でした。個人戦で強い選手に当たりましたが、後半になっても攻めていくことができました。延長に入って、流石に相手も疲れてきたのか、手数が少し減ってきました。

私も疲労はありましたが、以前の自分では考えられない粘り強さがありました。面で決めたか小手で決めたか少しうる覚えですが、相手がフッと気を抜いた瞬間に打ち込み、勝つことができました。辛かった掛かり稽古流しの成果でした。

剣道の掛かり稽古流しは二度とやりたくないと思う反面、辛かったけどやってよかったと思える、今でも印象に残る練習です。