顔面ありの大道塾ルールへの対応…脳トレで反射神経を高められる?

1990年代、大学生だった私はフルコンタクト系の空手に入門していました。

大学進学までフルコンタクト空手はおろか格闘技をしたことはなく、当時、ブームに火が付き始めていたK-1を見て格闘技に興味を持ちました。

顔面ありの大道塾ルールへの対応

さいわい筋力はそこそこあったのですが反射神経に自信がなく、カッコよく言えば打たせて打つブルファイター、実態は不器用に突進するだけのファイトスタイルでした。

当然ながら打たせて打つの攻撃ではあざやケガが絶えず、相手が体格、体力が上だと簡単に押し切られてしまいます。

ガードを固めてチャンスを待つ間に判定負けというパターンが続きました。

この頃はまだ顔面パンチなしのフルコンタクトルールなので判定負けで済みましたが、顔面パンチありルールであれば、ノックアウト負けもあったと思います。

そもそも私の入門した大道塾という流派は、最終的には顔面全体を覆うヘッドギアをつけて顔面パンチありのルールになるため、ブルファイターでは体がもたなくなると危惧していました。

空手の練習に脳トレを取り入れる

顔面パンチに対応するために「脳トレ」を取り入れました。

当時大学生であった私は心理学を専攻して、能力開発に興味を持つなか、動体視力の向上、脳の活性化が空手にも活かせると思いました。

具体的には、高速道路で自動車を運転して、インターチェンジで降りた後、スピードが遅く感じること(インターチェンジ効果)を実感していたので、空手に取り入れたら効果があるのではないかと思いました。

脳トレを取り入れる野球選手

また、当時、プロ野球のイチロー選手が頭角を現してきた時期でしたが、短時間に点滅する連続した数字を他の選手は4桁まで読み取れるのに対し、イチロー選手は8桁まで読み取れるという動体視力の良さが注目されていました。

そこで速読で動体視力向上、脳の活性化ができると思い、速読の本をいくつか買い、自己流で速読トレーニングをしました。

本のなかでも野球の練習に速読トレーニングを取り入れた選手がバッティングが向上して、調子がいい時はボールの縫い目まではっきり見えるようになったという体験談があり、自分もうまくいけば相手のパンチ、キックが止まって見えるようになるのではないかと期待しました。

そうなれば稽古でも試合でも一度も決めたことのないカウンターも打てるようになるかもしれません。

脳トレのやり方

具体的には眼球を上下左右に早く動かすなどの眼球運動、目を早く動かしながら本を読む(眺める)練習のほか、2つの絵の間違い探し、視線だけで迷路をたどる、前後左右逆さに文字を書く、などを行いました。

他にも、当時、イラストのなかに紛れ込んでいる主人公を探す「ウォーリーを探せ」という絵本がブームになっていたのですが、その絵本を見つけると挑戦していました。

自分としては「俺は科学的トレーニングをしている」と優越感に浸っていました。

当然ながら脳トレはメインではなく、スポーツジムにも通いマシンジム、スイミングをして総合的な体力づくりに励みました。

また、それまであまり重要視してこなかった約束組手も、「相手の動きを目に焼き付け、体の動かし方を脳に染み込ませる」ことを意識するようになりました。

脳トレで反射神経を高められる?

相手のパンチ、キックが止まって見えるというような期待した結果は出ませんでした。

野球のバッティングは上下左右、速さの違いこそあれ、前からボールが来ることは確実ですが、格闘技しかも打撃系格闘技はどこから攻撃が来るか読めないからでしょう。

しかし、視野は広くなったような気はして、相手のハイキックには対応できるようになりました。

感覚としてはキックが見えるというよりも、結果的にガードが出来ていたという感じです。

そして、ハイキックをさばいて、相手がぐらついた隙をつくことはできるようになりました。これにより、相手のハイキックをさばいて近接してパンチを乱打するといった戦法をとれるようになりました。

まだ黒帯以下の選手の場合、ハイキックを蹴る時の前動作が大きいことや、蹴り足の軌道が単調だからできたことかもしれません。

練習の目的に対する気づき

また、副次的な効果ですが、稽古に対する意識も変化しました。

当時の稽古環境は、専用の道場での稽古ではなく、時間借りした公共施設の武道場で、本部から派遣されてくる指導員が1人で指導しているという状況でした。

したがって集合して稽古できるのは週2回2時間であり、稽古の質を上げることは必須でした。つまり、だらだら稽古をする余裕はないということです。

しかし、それにも関わらず、以前の私は約束組手は自由組手の前の準備運動であり、なんとなくメニューに入っているからしているという認識でした。

ところが、こうした練習は、相手の動きと体の動かし方を一連の動きとして脳や体に染み込ませるためには必須のメニューであったと知り、ひとつひとつのメニューにはそれぞれ意味があることを理解しました。

練習の意味を見つけられずにただ何となく行っているのでは強くなれないと考えるようにしました。

ひと握りのプロ選手を除けば、時間、環境が十分に恵まれているなかで空手をできる人は少ないです。時間、環境の不足を埋めるには稽古への意識づけも重要だと思います。

脳トレをトレーニングに取り入れると効果があるとは断言できませんが最近はネット上でも、速読トレーニングや脳トレが気軽にできます。

社会人をしながら格闘技をされている方が自己啓発も兼ねて取り入れると新たな発見があるかもしれません。

市原海樹vsホイスグレイシー…大道塾生がUFC挑戦に興味が無い理由
約20数年前、大学生だった私は大道塾というフルコンタクト系の空手団体に入門していました。 大道塾ではスーパーセーフという顔面全体を覆うヘッドギア防具をつけて顔面パンチ、投げ技、締め技OKの北斗旗ルール(現在は空道ルールと改称)で試合を...