プロボクサーが日本チャンピオンや東洋太平洋チャンピオンになってもボクシング一本で食べていくのは難しい。最近ではこうした事実がスポーツファンの間で知られる様になってきた。
中には世界チャンピオンでも油断できない程のマイナーぶりである。モンスター井上尚弥以外でボクシング一本だけで悠々自適に生活できている選手はロンドンオリンピック金メダリストで前世界ミドル級チャンピオンの村田諒太ぐらいではないでしょうか。
勿論、「俺はボクシング一本で食っているぞ!」という選手が他にも何人も存在するのは承知の上です。でも、彼らの中には、無理をして「俺の職業はプロボクサーなのだ!」という意地を見せているだけであって、負けるとガラリと一気に事情が変わるのがこの世界です。
ボクシング選手を起用したテレビCMがほとんどないのはもし負けると、一気に商品イメージにも傷がつくからで、まず現役時代にテレビCMに起用された選手は、最近では村田諒太しか知りません。村田の場合はイケメンで好感度も高く、もうある意味完結しています。
プロボクサーのファイトマネーはどれくらい?
今回私が取り上げたいのはもっと底辺の4回戦、6回戦クラスの選手の事です。4回戦選手のファイトマネーは現在現金で6万円、切符での支払いを希望すると12万円との事だが、うらやましい限りです。
今から30年ぐらい前までは、4回戦ボーイのファイトマネーは現在の半分位で、自分の出る試合のチケットで支払われることが圧倒的だった。もちろんこれは地元での試合の話で、地方に出向いての試合は現金でした。切符を売らなくて良いので地方の試合大歓迎の選手が多かったのもうなずけます。
実際問題として、ほとんどの選手は仕事(飲食関係が圧倒的に多かった)を休んで試合に出るので、自分の店関係の人で試合に来られる人は限られており、特にボクシングが好きではない人もおり、定価で切符を買ってもらうのは気が引ける選手がほとんどでした。
そのくせジムにもよるが、マネージャー料の33%だけは現金で払わなければならないジムもある(あった)と聞いています。
私の会社の地下にある、中華料理店の店員は有名な世界チャンピオンを何人も輩出したジムの4回戦ボーイだったが、出前を頼む度に私にこぼしていました。
沖縄出身のこの彼は私に自嘲気味に「ファイトマネーではなくて、ファイト支払いですよ!」、とこぼしていたが、プロなのに結果としてお金を貰うのではなくて、お金を払って試合をするそうです。彼が試合の為に仕事を休むので、切符を買って見に行く人などおらず、ボクシングを見たいという友人もすくないそうです。。
プロとはお金をもらうからこそプロなのに、お金を払ってプロの試合に出るとは笑い話にもならない。この選手はしばらくしてボクシングを辞めたが賢明だったと思います。ちなみに、彼が所属していたジムは現在では閉鎖されています。
60年代のファイトマネー事情
私の場合も、ファイトマネーとしてお金を貰ったのは地方で試合した1967年のデビュー戦の3,800円だけで、地元の大阪でやった残りの5試合はファイトマネーの代わりに自分の試合のチケットだけだった。全部兄弟や友達にただであげていた。
おまけに、その当時のジムでの練習費の月謝の5千円はプロになっても支払い続けていたので、これなら入学金や授業料が免除の大学のボクシング部に入った方が良かったかもと思わないでもありませんでした。
現在の状況はその当時と比べて、相当改善されている様ですが、実態はジムによって大きく異なりますので、これからプロボクサーを志す人は注意してほしいものです。どこのジムに入れば、ボクシング一本で食べていくのは難しくとも、少なくとも「ファイト支払い」のような状態にならないかを考えてジムをじっくり選ぶこと。
昔では考えられなかった女性会員の存在
暗い話が続きましたが、ここで一つジム経営サイドからの見ての明るい話は、今ボクシングジムの経営の屋台骨を支えている会員の少なからず大きな部分が女性のフィットネス会員だという事です。
会員の多くは「ボクササイズ」が目的で、強い有名な選手が出なくても女性会員が沢山いる都会のジムが沢山あります。これは昔ではまったく見られなかった状況です。
ジムの経営陣はどうかこの追い風に乗って、選手第一を貫いてください。最近では日本にも強い女性の世界チャンピオンも何人か存在します。
それに、仕事を終えたOLが街の一般のスポーツジムに行かないで、ボクシングジムでエクササイズしてくれているという事は、このスポーツが肉体強化、ストレス解消の両面からも非常に効果的であるという事を証明してくれているようにも思います。