2019年11月の横浜アリーナで開催された皇治vs川原誠也の一戦について取り上げたい。
2018年末に武尊とのスーパーフェザー級タイトルマッチに破れ、再起を誓う皇治の前に立ちはだかるのはMMAのバックグラウンドを持つ川原。強烈な打撃を持つハードパンチャーだ。
皇治vs川原誠也の試合展開
↑皇治vs川原誠也(2019年)
1Rオーソドックスの構えから重い打撃を皇治のガードの上から浴びさせる川原。皇治はガードを固めているが川原の打撃の威力に押され、スタンディングダウンを取られてしまう。
試合続行し、川原が左右のフックの連打を皇治にあびせる。皇治はかなりのダメージがある様子だ。コーナーに詰められ川原が数十発それ以上の打撃を皇治をガードの上から被弾させる。
1R残り時間1分経過したところで打ち疲れた川原の打撃にはスピードがなくなっていった。
1R残り僅か川原の一瞬の隙をついた皇治が右のハイキックをヒットさせ、フックで追撃するとダウンを奪い返した。会場が一気に沸いた瞬間だった。1R終了後のインターバルでも皇治軍団の皇治コールはアリーナ中に響き渡っていた。
2Rは皇治は蹴りから自分の打撃の距離を組み立てながら試合展開を作っているようだ。川原の動きには1Rのようなキレはない。顔面一辺倒の打撃を放つ川原に対し、ボディ、ローへと散りばめた打撃の皇治が立ち技での技術に優れていた。
何度か皇治の良いミドルキックと膝が川原の腹部を捉え、削っていく。皇治の渾身のボディフックが川原の右ボディに入ったところで、川原をコーナーへと詰めさせる。
根性で立っている川原ではあるが、皇治の腹を切るような右ミドルキックが入ったところで川原がダウン。目が虚になる川原。再び立ち上がってきた川原に対し、皇治が一気に畳み掛ける。
残り15秒のところでロープに背にした川原に打撃の連打を与えたところでレフェリーが試合を止めた。K-1でのKO初勝利を決めた執念の皇治であった。
皇治軍団の存在も大きい
皇治の魅力は彼の人間力にある。実力云々よりも彼自身のプロモーション力はK-1時代からその才能を発揮していた。
彼のようにK-1からすんなりとRIZINに移籍して那須川天心戦を実現させた格闘家はいない。ただ残念ながらRIZIN参戦以降1度も勝ち星に恵まれていない。
彼には皇治軍団と称される皇治ファンがいる。皇治はファンサービスの精神で根強いファンを獲得した。ファンの存在が格闘技を続けさせる理由を与えているのかもしれない。
引退をかけた祖根寿麻との対戦
RIZIN参戦後4連敗を喫し、未だ初白星の見えない皇治。彼にとってはもう後がない1戦だ。皇治自身も先日行われた記者会見にて、今回負ければ引退すると口にしている。
崖っぷちの皇治の対戦相手は修斗環太平洋バンタム級チャンピオンの祖根寿麻。彼はMMAファイターではあるものの、好戦的な打撃のスタイルの為、立ち技でのルールでも特に問題ないだろう。
さらに祖根は過去にもKrushに参戦経験があり、見事立ち技での1RKO勝利を収めている打撃の実力者である。
皇治にとっては決して容易な相手ではない。MMAファイターの独特な間合いに慣れずに敗北してしまう立ち技ファイターは過去に多数存在する。過去に皇治自身も、元MMAファイターの川原相手に1RKO寸前まで追い詰められている。
今回の祖根との試合でも1Rが鍵を握る事は間違いないであろう。
(この記事は皇治vs祖根寿麻の試合が行われる前に書かれています。)
警戒すべきは祖根寿麻の膝か
恐らく1R開始早々に祖根が打撃のプレッシャーをかけてくると予想している。特に祖根の跳び膝には皇治は注意したいところだ。皇治はパンチを打つ際に頭から入る事や頭が下がる癖が有る。
これは、祖根の跳び膝を誘発すると見ており、顎に合わせられる、或いは額に膝を貰いドクターストップというケースにもなりかねない。
打たれ強さでは皇治にアドバンテージ
皇治が1Rを耐え抜ければ、彼の勝率が高まると予想している。前半に打ち疲れた祖根に反撃にでる皇治がボクシングのみならず、ボディやローに散らす攻撃ができれば皇治の時間になるのではないだろうか。
耐久力を比較すると、皇治は明らかに打たれ強いが、祖根はそこまで打たれ強くはないはずだ。直近のRIZINの試合でも祖根はコーナーで顎にパンチを貰いKO負けしている。
一方、皇治は1階級以上上の五味隆典とのボクシングマッチでもダウンを奪われる事はなかった。耐久スタミナで勝る皇治ではあるが、打撃のキレには課題がありと見られている。2021年8月のRIZINキックトーナメント以降、皇治がキレのあるボクシングを身に付けていれば、祖根が倒れる場面もあり得る。背水の陣で挑む皇治、果たしてRIZIN初勝利なるか?
(文・Totty2)
↑皇治vs祖根寿麻(2021年RIZIN.32)