柔道 試合

「どうせ勝てない」のバイアスを打ち破った大学柔道部の後輩

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私が学生時代所属していた柔道部には夏と冬に大きな試合があり、それらに優勝することが部の目標でした。私が大学4年生の夏に出場した、最後の夏の団体戦。この試合では、関西に拠点を置く大学が多く集まり、トーナメント戦で優勝を争います。

大学から柔道を始めた後輩に団体戦出場のチャンスが

私が大学柔道部4年生だったときの、1つ下の後輩の話になります。彼は大学入学まで運動経験がないにもかかわらず、大学から柔道を始めるという珍しい経歴の持ち主でした。

彼は人一倍努力家で、生活をすべて柔道につぎ込み、練習も決して休むことなく、練習中も休憩せず、柔道にかける情熱は部員の中で1番でした。

しかし、なかなか試合で結果が出ず、彼自身も悩んでいました。補欠選手でしたので、通常では団体戦には出られませんでしたが、この試合ではメンバーの1名が怪我で出場できなくなったため、急遽メンバーとなりました。

決勝に進出し、強豪校との対戦に

試合当日は対戦チームにも恵まれ、3戦全勝で決勝に駒を進めることができました。決勝の相手は、これまでのチームとは違い強豪チームです。

さらに彼が対戦した選手は地方2位の選手であり、どう見ても後輩が勝てる余地はありませんでした。

しかし、この日の彼はいつもとは違いました。決勝までの3回試合を全て一本勝ちで勝利を収めています。私たちは、当初彼を試合後半にオーダーを置いていましたが、彼の今回の活躍を加味しあえて前半のオーダーにもっていきました。何か奇跡を起こしてくれると感じていたのかもしれません。

決勝戦では次鋒に抜擢。先鋒に次いで試合の流れを作り出す重要なポジションです。そして決勝戦が始まります。

相手の背負いを「技あり」でしのぐ

先鋒の選手は、強豪高校の出身で容易に勝利できると考えておりましたが、我々の予想に反し、なんと開始1分で相手に投げられてしまいました。嫌な雰囲気がチーム内に漂う中、彼の試合が始まります。

試開始後すぐに彼は、相手の襟を掴もうとしますが、相手は組み手が強く、いいところを持たせてはくれません。一度組み手を切ろうとしても、相手の力が非常に強く組み手を切ることができません。

一方相手選手は、すぐに自分の得意な組み手に持っていき、開始1分半で背負い投げの形に入りました。彼は、まともに相手の技を受けてしまい投げられてしまいました。しかし、今日の彼はいつもと違います。なんと空中で体を反転させたのです。

その結果、完全には背中が地面には着かず、技ありは取られたものの一本負けにはなりませんでした。

形勢逆転の一本勝ち

彼の驚異的な粘りに会場はどよめき、相手も彼の動きに驚愕しており、会場内は異様な雰囲気に包まれていきました。そして、試合が再開されます。

一度投げられて体のこわばりが無くなったのか、彼の動きが非常によくなっていきました。相手より先に技を繰り出し、積極的に相手にプレッシャーを与えていきました。相手は彼の気迫に押され、時間が進むにつれ消極性が目立ち始め、その結果相手に指導が3回もかかりました。

これで試合が振り出しに戻ったのです。相手は、次に指導がくれば反則負けになってしまうので、攻めるしか手立てがありません。案の定3回目の指導の後、相手は焦って無理やり攻めようとしてきました。

その瞬間、彼は狙っていたかのように相手に引き込み十字固めをかけたのです。それが見事に決まり、強豪相手から一本を勝ち取ったのです。この奇跡の勝利にチームは大いに盛り上がり、その後の試合も勝利を重ね優勝することができたのです。

「どうせ勝てない」というバイアスを打ち破る

優勝後、彼に試合中何を考えていたかと訊ねると、「相手が誰であろうと勝つ」としか考えていなかったと答えました。

私たちの柔道部はそこまで強くはなく、いつも強豪校に負けており、それによって私たちはどうせ勝てないんだとバイアスがかかっていました。

しかし、彼は、バイアスは打ち破れるということを私たちに証明してくれたのです。彼のおかげで、その後の部の士気や個々の実力も向上し、冬の試合にも優勝することができました。

成長を止めるのも、高めるのも自分自身の気持ち次第であることを教えてくれた試合であり、柔道を引退した今も未だに心に強く残っています。

(文・グルジアの孤高の柔術家)

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