2008年K-1World GP1回戦、20世紀最強の暴君ピーターアーツと新世代のエース、バダハリの1戦。
ピーターアーツはK-1創世記から暴君の如き強さで3度の王者に輝いた。
1998年以降、チャンピオンから遠のいているものの、16年連続トーナメント出場を果たすなど現役としての強さを発揮し続けている。
また、前戦の開幕戦では現王者セーム・シュルトから勝利を収め、未だに進化し続ける伝説であった。
対するはゴールデンボーイ、バダハリ。その破天荒な言動、ファイトスタイルでK-1参戦直後から注目を浴びる。
参戦当初は試合結果に恵まれなかったものの、肉体改造により従来のスピードに加え、圧倒的なパワーをつけたバダハリは王座に最も近い存在となっていた。約20歳の年齢差のある2人による世代交代のある試合になるのか。新旧エース対決が注目を集めた。
ピーターアーツvsバダハリの試合展開
1R開始早々からリーチのあるバダハリのストレートがピーターアーツの顔面を捉え、一気にアーツをコーナーに追い詰めたバダハリはラッシュで追い込み、ピーターアーツはダウンを喫する。
なんとか立ち上がるがバダハリのスピードにアーツがついていけていない。これで終わりかと思ったが、なんとか耐えたアーツがローキックで散らし、距離をとって体勢を立て直した。
先ほどまでのラッシュとは異なり、やや控え気味になったバダハリ。アーツのベテランの巧さが際立ったところで1Rが終了した。
2R開始からアーツが前に出てプレッシャーをかけていくが、バダハリの回転蹴りがガードの上から入る。やや効いた様子のアーツ。
コーナーに追い詰められたところでバダハリが飛び蹴りを見舞いダウンを奪う。立ち上がった後もアーツにはダメージの色が伺える。
強引にアーツとの距離を詰めていくバダハリの攻撃が徐々に当たり始め、アーツの足がもつれてスリップ。
ダメージにより足にきている様子だ。またもやバダハリの左ストレートが入り、苦し紛れのアーツが技術で距離を制してなんとか耐えようとしているが、バダハリの打撃の重みでアーツの動きが徐々に悪くなる。
足下がおぼつかない様子のアーツを危険とみなしたレフェリーが試合を止めた。アーツはバダハリの攻撃で顔面は赤く腫れていた。世代交代を実現したバダハリの圧倒的な強さは新時代到来を予感させた。
K-1低迷期の世代交代劇
ピーターアーツとバダハリの世代交代で、K-1新世代の扉が開いた。
この時期のK-1はボブサップ、ホンマンの出現を筆頭に体格の有利を武器としたモンスター路線が浸透していた。
そんなK-1低迷期におけるバダハリら新世代の出現は本来のK-1に軌道修正するきっかけとなった。試合は終始バダハリが圧倒した展開になったが、アーツのベテランの巧さも光った試合であった。
老いてもなお、若手相手にここまでのパフォーマンスができるピーターアーツはまさに生ける伝説だ。試合後にはバダハリがアーツに敬意を示す場面も見られた。
バダハリ自身は後に自身の戦績で最も意味のある勝利にアーツとの試合をコメントしている。バダハリは尊敬するファイターにアンディ・フグを挙げてもいる。
ピーラーアーツはアンディ・フグと盟友でもあり、良きライバルでもあった。バダハリは自らの尊敬する男とアーツをどこかで重ねていたのかもしれない。偉大な男からの勝利は、K-1の歴史の1つの区切りとなった。
(文・Totty)