わたしの恩師である、柔道師範のTさんについて書きたいと思います。
Tさんは柔道師範であり、柔道教室を営んでいる傍ら、整骨院の先生でもありました。
わたしは小学校のころに足首の靭帯の怪我をし、この整骨院を訪れたのが初めての出会いでした。その後、体験授業を通してこの柔道教室に入ることになり、それ以降3年間Tさんからの指導を受けることになりました。
社会人になった今でも、このTさんとの出会いがあったからこそ今の自分がいると思えます。
基本練習をサボっているのを見抜いた師範
わたしは小学生だったため、年上の人のカッコいい派手な技に憧れてつい基本練習をサボっていた時期がありました。せっかく試合をするなら、カッコよく勝ちたいとの思いが強かったからです。
しかし、恩師と練習で会った際にすぐにサボっていたことを見抜かれ、
「それじゃあいつまで経っても勝てないよ」
と厳しく指導されたのを覚えています。
実際にその頃のわたしは試合でひとつも勝つことが出来ていませんでした。年上の相手ならともかく、同い年や年下の相手にも負け続ける日々が続いていました。
野球やサッカー、ほかのさまざまなスポーツにおいてもやはり基本が出来ていない選手は弱いですし、勝つことができません。
プロのスポーツ選手でも基本練習を大事にしない選手はいません。それくらい大事なものなのです。
柔道においても同じです。基本練習をきっちりとこなすこと、何度も練習を重ねて自分のものにすることでより高度な技術も習得することができると何度も言い聞かせられました。
基本である組み手をしっかりとやり直すことや、背負い投げを極めることで、試合をわたしの思う通りに動かしやすくなることを恩師は理解しており、それをわたしに懸命に説明してくれました。
勝つために必要な精神面の指導
Tさんからは、柔道に関する知識だけでなく、精神面の指導もたくさん受けました。
スポーツ全般において言えることですが、勝ちたい!という気持ちがない人は勝つことができません。練習うんぬんのまえに、強い気持ちを持つことが大事だと教えられました。
また、自分に嘘をついているようでは気持ちにブレが出てしまうので、自分が納得いくまで練習をして、自分自身を信用できるようになることが必要とも教えてもらいました。
あとは、家族や周りの人に感謝することの重要性にも気づかせてくれました。感謝をするには、小さなことにも気づく力が必要で、自分自身も相手に感謝をされるような行動をすることで気づくことができます。
まだ小学生のわたしには難しい言葉ではありましたが、今になってその意味をしっかりと理解することができるようになりました。
柔道師範から感謝する気持ちを学んだ
仕事でも、スポーツでも、基本的なことをきちっとこなすこと、固めることが重要です。わたしはそれを柔道師範のTさんから学びました。
どんなことでもまずはベースとなる部分が大事です。そのことを怠るとどうなるか、また基本をきっちりやっていれば後々どのようなプラスの要素があるのかを柔道を通じて体験できました。
そのほかにも、わたしが今周りの人に感謝をすることができているのも恩師の影響だと思います。恩師は両親がおらず、小さい頃苦労をして育ったこともあり、わたしがやりたいことをできているのも、普通にご飯を食べれて家があることも、当たり前じゃなくて本当に素晴らしいことなんだと教えてくれました。
常に周りの人がいて自分が成り立っていることを忘れずにいられること、当たり前のように家族が元気でいてくれることの喜びを感じれるのも、小学生のころに恩師から受けた指導があったからだと思っています。
(文・AN)