2019年の大晦日に開催されたRIZINキックボクシングルールでの一戦。
那須川天心vs江幡塁。
那須川天心はどんなキックボクサーか
キックボクシング界の神童・那須川天心。33戦無敗、弱冠21歳にして複数のタイトルを保持する。
衝撃的なKO負けを喫したフロイドメイウェザーJrと対戦から1年。ボクシングスキルにも磨きをかけ、同年には世界中のキックの猛者を集結させたRISE WORLD SERIESを制し、タイトル獲得をしている。
江幡塁はどんなキックボクサーか
対するは新日本キックボクシングの江幡塁。昨年は自身初のキックボクシング他団体参戦を果たしたKNOCK OUTトーナメントで優勝し、プロデビュー後は日本人無敗を誇っている。
江幡は高校生の頃、同じくキックボクサーの兄・陸共に伊原道場に入門する。伊原道場と言えば、伊原信一氏が代表を務めるジムで当時Kー1世界王者に上り詰めた魔裟斗を指導した実績もある人物だ。
年齢は28歳と充実したキャリア期に突入している。江幡はパンチ、キック共に相手を倒す力を持っており、体幹も強く、天心自身も試合前の両者公開練習では「基本がしっかりしている選手」と江幡を評価している。
国内キックボクシングトップクラスの2人の頂上決戦となった。
那須川天心vs江幡塁の試合展開
1R開始からプレッシャーをかけていく天心に対して、江幡も自分のペース維持を徹しているようにステップワークを踏みながら自分の距離へと持っていく。
ガードの上からの天心の打撃力には階級を超えた重みが伝わってくる。
詰めてくる天心に対して江幡の打撃が天心の顔面を捉えるが、天心は一向に下がらない、むしろ詰めてくる。
江幡も天心のプレッシャーを感じている様子で打撃を放つも天心に距離を見極められている。
試合開始から1分半。試合が動く。天心の左の前蹴りが江幡の顔面を直撃。思わずマウスピースが外れる江幡。
後退する江幡に天心渾身の左ストレートを当てコーナーに追い詰める。コーナーからなんとか回避した江幡だっだが、フェイントの膝から右、左フックが江幡の顔面を捉え、江幡が崩れる。
ふらつきながら立ち上がる。立ち上がった江幡に一気にパンチでフィニッシュにかかる。
江幡も撃ち合いに応じるも、再び天心の打撃に後退する。天心はボディへ攻撃を打ち分け江幡を削っていき、再び顔面へのパンチのコンビネーションで江幡を崩れさせる。
顔面が鼻血で赤く染まる江幡にはダメージの様子がうかがえる。残り30秒。天心が回転飛び蹴りを見舞う。
立っているだけで精一杯の江幡にパンチからハイキックを見舞い、最後はワンツーフィニッシュで崩れ落ちた江幡。圧倒的な強さを見せた那須川天心が国内キックボクシングトップクラスの頂上決戦を制した。
国内で対戦相手が見つからない天心
天心の強さに改めて「神童」を感じさせられた。ここまで強い天心を見たのは久々だった。天心が強すぎたとしか言いようがない。
ここ最近の天心はフェザー級に近い体重での試合が頻繁だったこともあり、対戦相手も自分よりも通常体重が重い選手が多かった。
那須川天心vs江幡塁の対戦は天心の適性体重と言える-56kg契約での試合。フェザー級仕様の打撃力がバンダム級において階級以上の破壊力を発揮したのであろう。
RIZIN実行委員長の榊原氏は「同階級では相手がいない、見当がつかない」と述べている。
ボクシング?oneチャンピオンシップ?天心の今後
ボクシングに転向も囁かられる天心だが、私としてはまだまだ未知の強豪がいると信じている。
例えば、天心を最も苦しめたと言われている現在ONEで活躍中のロッタンをはじめとしたタイの強豪勢の数は計り知れない。
天心の圧倒的強さも世間からすれば「日本人に勝利したらしい」「キックボクシング界の強い人らしい」ほどの認識程度しかない。
日本中を巻き込む格闘技ムーブメントを創るには、世間を巻き込むほどのマッチメイクからプロモーションを常に発信していく必要があると思う。
今がその成長過程であると言うが、全然足りない。残念ながら一部の国内格闘プロモーション中には鎖国体制をとる団体も見受けられるが、ビジネス格闘技をメインに考えている団体は確実に伸びず、選手も淘汰されていく。
天心の勝利から見えた幻想が国内に留まらず、いずれは世界を巻き込むムーブメントに目を向けてプロモータには動いてもらいたい。
(文・Totty)