昼間は会社員をしながら、総合格闘技のプロを目指して週3回、道場での練習とジムでの筋トレを続けている。
トップクラスのプロ総合格闘家はボクシング、キックボクシング、レスリング、柔道など、何らかのバックボーンを持ていることが多い。中には、そうしたバックボーンを持たず、最初に行う格闘技が総合格闘技という選手もいる。
僕もその内のひとりだ。もともと何かの格闘技をやっている方が有利なのは事実だが、僕はそうしたバックボーンを持つ選手に負けるのが悔しくてがむしゃらに練習した。
月に1度は試合し、とにかく経験を積んだ。その一方で、総合格闘技の練習だけではパンチ、キック、立ち組み、寝技等の個々の技術の伸びがどうしても遅くなってしまうので、ボクシングジム、空手、柔術の道場に出稽古させてもらっている。そうして個別のスキルを高めながら、総合格闘技の練習でそれらの個別のスキルを繋げ合わせる工夫をする。
リアネイキッドチョークが得意技に
僕にも得意技と呼べる技ができた。それは、「リアネイキッドチョーク」という絞め技。
絞め技が認められている格闘技には柔道がある。同じ組技でもレスリングやサンボといった格闘技に絞め技はない。
ただリアネイキッドチョークは柔道の絞め技とも少し異なっている。柔道では基本的に道着を使って技を極める。一方、リアネイキッドチョークは自分の腕で直接絞める。裸締めやバックチョークとも呼ばれている。
リアネイキッドチョークは柔道の試合ではほとんど見ることはない。この技は道着を着ないで行うノーギ柔術やグラップリングといった競技で見ることができるほか、何と言っても、総合格闘技のカッコいい極め技となっている。
僕がこの技を練習し始めたのは、UFCファイターである中村K太郎選手がDEEPやUFCでこの技を極めている姿を見てカッコいいと思ったから。練習で試してみたところ想像通りに上手くいき、今ではすっかり得意技になっている。
リアネイキッドチョークとポジション
もちろんリアネイキッドチョークはカッコいいだけの技ではない。総合格闘技で勝利する上で非常に優れた技でもある。
一番の利点は、たとえ失敗しても有利なポジションを失わないこと。
例えば、僕のもう一つの得意技である腕ひしぎ十字固めの場合、マウントポジション(馬乗りの体勢、柔道の縦四方固め)から仕掛けそのまま極めることが出来ればいいが、相手に耐えられると有利なマウントポジションを失ってしまう。
せっかく攻防を有利に進めていたのに相手と同条件の寝技やスタンドから始めなければならないのは厳しい。極めきれなかったことで、その後の試合展開が変わってしまうことはよくある。
リアネイキッドチョークは、バックというとても有利なポジションからかけることができ、たとえ失敗したとしてもバックのままなので不利になることもなく、次の動きに切り替えることができる。実際に試合で使うようになって、この技の有利さを実感した。
リアネイキッドチョークのやり方
僕はひたすらyoutubeでテクニック動画や試合動画で実際に極めているシーンを見て動きのイメージを持ち、それから練習で何度もパートナーに技を反復で受けてもらい練習した。
この技を練習し始めてから1カ月後くらいの試合では実際にリアネイキッドチョークで1本勝ちすることができた。
リアネイキッドチョークの極め方は具体的には次のようになる。
- まず相手のバックにつく
- 背後から、相手の腹の下から両足の間あたりに自分の足を入れ込んでいく。
- 自分の両足をロックし相手の下半身を固定する。
- 次にどちらかの腕を深く相手の喉元(首)に巻いていく。
- もう1本の腕の肘裏で巻き付けた腕をキャッチして捻り上げるように絞める。
技を極める1番のポイントは、腕をいかに相手の首に深く巻き付けるかというところ。
相手もそれをさせないように腕の動きを自分の腕で妨害したり、顎を引いて腕を入れ込ませないように防御してくるので、パウンドで気を散らせたり、「右腕を入れ込ませると思わせて左腕をいれる」などのフェイントを入れると有効だ。
また真っ直ぐだと、極まるには極まるが腕の力のみに頼った形になるので極まり難く、腕が疲れてしまう。そこで絞めている時に自分の腰を前に突き出すと、捻り上げる様な形になり、自分の足を引く力も相手の首にかかる為、技が極まり易くなる。
有効な技なので警戒される
リアネイキッドチョークは有効な技なので、たいていの試合巧者の選手はまずは相手のバックにつき、この技につなげる流れを狙っていることが多い。
当然相手は警戒しているのでバックにつくのは容易ではなく、たとえバックにつくことができても、ずっとバックポジションをキープするのはスタミナを消費する。
リアネイキッドチョークはかける側もかけられる側もスタミナをかなり消耗する。
早めに極められるようにテクニックを磨くこと、試合の決め時で使うことが大切だと思っている。
(文・shu.co)
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