中学生の頃から格闘技に興味を持ち、空手の道場へ通い始めました。
ですが雑誌を見て最も惹かれたのはキックボクシングでした。
高校卒業の時、同級生たちはクラスが進学コースだった事もあり、大学へ進学しました。
私はどうしてもキックボクシングをプロでやりたいという思いがあり、高校卒業後に憧れていた選手が所属し、有名なジム会長のいる東京のジムへ住み込みの内弟子として入門しました。
自衛官を経てキックボクシングのプロに
最初は、プロとしてやっていけるだけの体が作れず、プロデビューも出来ないまま一年半ほどで辞めてしまいました。
その後は地元で自衛隊に入隊し、自衛官として過ごしていましたが、休暇の際に久しぶりにかつての仲間と出会うと、とてもキラキラして輝いて見え、「もう一度やりたい」と思い、21歳の時に自衛隊を退職し再度キックボクシングの道を志しました。
再スタートから約半年後プロデビューが決まりました。舞台は高校時代に憧れた後楽園ホールでした。
空前の格闘技ブーム、とりわけK-1ブームの中、私が惹かれたのはキックボクシング、そして「打倒ムエタイ」でした。将来は本場タイのチャンピオンになりたいと思い、フリーターをしながら、プロのリングに立ちました。
ローキックが得意技になった試合
所属していたジムの会長も試合ではローキックを得意にしていましたが、蹴りの基本はミドルキックという指導方針があり、ローキックは普段はあまり練習していませんでした。
私自身はどちらかといえば蹴りよりもパンチが得意だと思っていた事もあり、ローキックに関しては相手の目線が下に下がればパンチが当たりやすくなるので、「パンチへのつなぎにでもなれば」という程度の意識でした。
しかし、プロで3戦目の試合の時にふと蹴ってみたローキックがタイミング、間合い、相手の脚の当てるポイント、自分の蹴り足のポイント、それらすべてが完璧ともいえる状態で蹴れたのです。
その瞬間に私の中で「これだ!」と、ローキックのコツともいえるものを体得した気がしました。
そのローキックは、オーソドックスの構えから蹴る右のローキックで、至ってシンプルで基本ともいえる技でした。
練習よりも先に試合で技を覚える
この試合はタイ人選手との試合だったのですが、ローキックを有効に使い、そのままローキックで2ラウンドKO勝ちを収めることができました。
KO勝利という結果だけでなく、得意技まで手にする事が出来ました。
格闘技雑誌のインタビューで有名な選手が「練習ではなく、試合で覚える。試合が先で、試合で出来れば練習でも出来るが、練習で出来ても試合で決まらなければ覚えられない」と言っていましたが、まさにその通りの体験をしました。
相手に当たる力を入れないローキックの蹴り方
私のローキックは、本当にまったく力を入れずに蹴ります。
子供の頃に靴をつま先に引っかけて、ボールを蹴るように足を振って靴を飛ばした経験はないでしょうか?
引っかけた靴を飛ばそうとした時に力んでしまっては靴は飛びません。余計な力を入れないことが重要です。
キックボクシングにおいて蹴りを当てる時は自分のスネを相手に当てます。
なので、このローキックを蹴る時には足の力は抜き、自分のスネを前方に飛ばすイメージで靴を飛ばす時のような要領で蹴るのです。
最後に自分のスネが相手の脚の当てたいポイントにヒットするように心掛け、わずかにコントロールをします。
よく蹴り方については腰を入れて蹴る、体の回転を使って蹴る、膝のスナップを生かして蹴る、といった表現を聞いたりしますが、そういった蹴り方をしようとすると体全体が力んでしまって動きが固くなりがちです。
結果としてスピードが遅くなったり、モーションが大きくなったりして、相手に当たらなくなると思います。
まったく力を入れずに蹴ったローキックが相手に当たれば、タイミング、間合い、相手の脚の当てるポイント、自分の蹴り足のポイントが完璧ならKO勝利につながります。