私が小学生の頃からお世話になっているフルコンタクト空手の道場の師範は30代前半で普段は税理士として働く、物腰柔らかな方でした。
しかし片目が義眼で体中が傷だらけで謎な部分も多く、後から知ったのですが元レンジャー部隊という経歴の方でした。
強くなって調子に乗っていた高校時代
私が中学に上がりたての時、格闘技をやっておりそれなりに名前が知れ渡り、色々な所から声もかかり恥ずかしい話ですが調子に乗っていました。
ある日道場に行くと珍しく師範から「お前強くなったらしいな色んなところから名前聞くぞ。俺が稽古つけてやろ」と笑顔で言われました。
師範は身体がボロボロで組手などしているところを誰も見たことがなかったのですが、選手時代は出る大会出る大会で恐れられていたと会長から聞かされていました。
調子に乗ってた私は「ここでぶっ倒したら俺カッコいい」と思っていました。
空手師範との組手
他の練習生も各々練習の手を止め私たちの組手を見始めました。
いざ始まったのですが師範は打って来いと私の攻撃を全て受けました。当たっているハズなのにまるで大きな岩のようで堅いのに吸収クッションを攻撃しているように違和感が生じました。
「なんだよこれ…」と焦りから、顔面への突きと見せかけて目潰しを仕掛けました綺麗に師範の目に入り道場内は悲鳴に近い声が響き、これで倒せると思いました。
師範は一瞬にして鬼のような表情になり私の記憶はそこから無くなりました。
パッと目が覚め気がつくと夜になっていて周りは練習している中、隅っこで寝かされていたようです。遠くから師範がゆっくり歩いてきて言いました。
「強くなったのはわかった。でも格闘技の方がおもしろくないか?その強い拳は何のために使う?お前の友達家族恋人お前の周りの力無い人のために最終手段で使うものを教えてきたつもりだ。お前は心が弱い。俺の指導が足りなかったせいでもある。もしもっと強くなりたいなら明日からまた道場に来なさい。」
反省して練習に打ち込んだ
反省した私は帰ってすぐに母にバリカンで坊主にしてもらい誰よりも早く道場に行き雑巾掛けをして稽古に励みました。
後から聞いた話ですが、師範から母に「すみません。しばいてしまいました。」と電話があったそうで、「全然良いですよ。もっとボコボコにしたっていいのに」と笑いながら答えたそうです。
師範はその日から1年間挨拶をしても口一つきいて貰えませんでしたが、仕方ないよなサミングもしてしまったしと必死に稽古に励み1年後大きな大会で準優勝した際、すれ違い様に肩をポンと叩かれ「よくやったな」の一言で少し認めて貰えたと思いました。
今は私が仕事で遠い所に就職した為全くお会いできていないのですが未だに心の教訓は私が就職前に道場に挨拶に行った際のお言葉です。
「常に感謝をすることだ。人間は自分1人じゃ何も出来ない自分にとって嫌なことをした人にでも感謝しろ。自分が不利な状況で損をしていたとしてもこれを乗り越えれば同じ悩みを持った人に言葉をかけられる有難いと思え。いつでもまた待っているからな頑張れよ」
この言葉のおかげで今の今まで様々な壁を乗り越えることができています。