私には、圧倒的にスタミナがなかった。華奢な体型でいかにも勉強オタクなルックスだったし、試合の後半は切れが悪い。とにかくスタミナをつけるということが自他ともに認める課題だった。
剣道の試合は3分だ。スタミナなんて要らないと誤解されがちなのだが、そんなことはない。1試合にかける集中力は相当なもので、1秒油断しようものなら簡単に一本を取られてしまう。体力的にも精神的にもスタミナが必要になる。
掛かり稽古でスタミナづくり
スタミナをつけるために徹底的に行ったのが「掛かり稽古」である。
ひたすら元立ちに向かって攻め続けるという鬼のメニューだった。基本は1分×15回。ひたすら声を出し、打ちこみ続ける。元立ちになる人はコーチか先輩で、手を抜こうものなら怒鳴り散らされる。このメニューの為に体力を温存しておくという仲間もいたほどだった。
限られた時間の中で自分との戦いを続ける。これが本当に苦しかった。疲れてくると振りかぶりが小さくなったり、足が動かなくなったり、相手のスキに反応できなくなってくる。最後の10秒は気持ちだけで立っているような感覚に陥る。
他の部活の朝練で一緒に走る
掛かり稽古とは別に、もうひとつ行ったことが「走り込み」である。走るなんて嫌いだし、汗かくし、暑いし…と走ることを避けていたのだが、稽古だけでは周りとの差がつかない!と思い、走ることを決めた。
最初は家の周辺を30分程度走ることにしたのだが、走ることが嫌いな私はすぐに3日坊主となった。次に考えたのは、他の部活の朝練にお邪魔するという方法だ。当時のことを振り返れば、他の部活の朝練に参加するなどかなりぶっ飛んだ考え方だったかもしれない。「周りに頑張っている奴がいれば走るだろう」、という自分なりに続けられそうな理由にしてお邪魔したのであった。
走らされる部活として有名だったサッカー部に仲間入りし、初日からいきなり10㎞走らされることとなった。全く部員についていけず、吐き気との戦いで心底後悔した。しかし、負けず嫌いに火が付き、徐々についていけるようになった。
この2つの練習から体力的にも精神的にも強くなったと主観的ではあるが感じるようになってきた。勝つ方が珍しいと言われていた私だったが、1年後にはチームのキャプテンとなり、大将も経験した。
この2つの練習があったからこそ成し得たのだと思う。