打撃系の格闘技をやっていると、
「パンチは脚で打つ」
と言われることがあります。
何となく「そうだよなぁ」とは思っても、深く考えずに聞き流していることが多い気がするのです。
なぜ手で打つパンチが脚で打つといわれるのか、しっかり考えてみました。
格闘技における速度と破壊力
「パンチは脚で打つ」のだとすれば、「キックは腕で蹴る」も成り立つのだろうか?
この2つに共通しているものは何だろうか?
たどり着いた答えは「鞭」でした。
パンチはインパクトの瞬間の速度が破壊力を生みます。これはキックも同じです。
そして鞭の先端の速度は音速の壁を破るほど速いです。私は昔剣道をやっていましたが、竹刀で音の壁を破ったという話しは聞いたことがありません。
つまり、破壊力を生み出すには体の各部位を脱力して鞭のように使い、速度を出すのが良いのです。
スピードを生み出す体の使い方は?
鞭は長い方が先端の威力が上がります。
タイソンのパンチが重いのは、上半身全部を鞭のように使っているから。
サムゴーの蹴りが重いのは、胸から下を鞭のように使っているから。
例えば、蹴りであれば、骨盤の中心からが脚だと思って蹴るよりも、胸から下を脚だと思って蹴った方が重い蹴りになります。鞭が長い方が末端の速度と衝撃力は上がります。
鞭が長いというのは、言い換えると、動きに参加する関節が多いということです。
スピードを生み出すには脱力して多くの関節を参加させることが大切です。
瞬発力を高めるステップワークの練習方法
次のポイントを意識して、反復横跳びをやってみましょう。
- 両足のカカトをつけた「気をつけ」の姿勢で立ち、両手を体の前でクロスします。これが基本姿勢です。
- クロスした両手を広げながら横に反復横跳びします。このとき片足はスタート位置に残しておきます。
- 体を戻しながら両手をクロスさせた基本姿勢に戻ります。
- 次に反対側に同じように跳びます。
- 基本姿勢に戻ります。
この反復横跳びの狙いは、ステップの動きに腕の振りを合わせることで、体幹の開閉の勢いを活用することです。従来の反復横跳びとは異なり頭の位置も移動します。
体幹を意識して、爆発的な伸展と収縮のイメージで行うとスムーズに動けます。
この動きが出来るようになったら右、右、左、左など同じ方向に進んでみたり、斜めに進んでみたりと、バリエーションを増やしていきます。
さらに次の段階として歩幅を小さくしていくことで、飛び出そうとする勢いを生み出しながらも、これを構えのうちに納めるような感覚が生まれました。その結果、動き始めで脱力でき、勢いを解放するだけで素早く動くことができました。
短い距離で瞬発力を生かしたステップ
このような動きが出来るようになったことで、どの方向にでもいきなりかっ飛んでいけるようになりました。私はこれでドニーロング戦のタイソンのような切り替えの早い瞬発的な踏み込みができるようになりました。
私は伝統派空手もやっていたのですが、遠い間合いから飛び込む空手の動きと、ここで紹介した反復横跳びの動きは異なります。
反復横跳びの動きは一歩の移動距離が短い分、トルクが強く、細かい方向転換に優れています。相手の攻撃の隙間を縫って前進するときや、近距離でのサイドステップなどに強くなります。
ステップが鋭くなったことで、それに乗った攻撃の威力も上がったように思います。
(文・千里三月記)