2019年10月にRIZINで行われた-70kg世界トーナメント1回戦、Bellatorの刺客パトリッキー・ピットブル・フレイレ(ブラジル・33)vs川尻達也(日本・41)の1戦について紹介したい。
40代のファイター、川尻達也とは
THEクラッシャーの異名を持つ川尻はマウントからの打撃、サブミッションで試合の主導権を握るファイトスタイル。
修斗世界王者に輝き、その後はPRIDE、DREAM、STRIKEFORCE、UFCを経験し、現在はRIZINに拠点を移している。
41歳を迎えた川尻。年齢的には引退適齢期は十分に満たしているが、それでも格闘技を辞めない。
川ちゃんと声援を送るファンへの想いや自身でタイトル獲得への執念が彼のまだ闘うという意思の原動力とも言える。同大会はそんな川尻にとってタイトル獲得最後のチャンスとなる大会であった。
川尻達也vsパトリッキー・ピットブル・フレイレ
ゴングと共に低い構えの川尻はピットブルへの組付きを狙っていた。
打撃力では圧倒的にピットブルが有利であったのは川尻もわかっており、ピットブルの打撃の危険距離を作らない様にしていた。
組付きからマウントに持ち込みたい川尻はじりじりと前に詰めていく。組付に持ち込もうとするも、体幹の強いピットブルに往なされる。
試合が動いたのは開始1分経過くらいだった。ピットブルの強烈な左ミドルキックが川尻のボディを捉えた。川尻はこの1撃で後退し、動きが悪くなる様子だった。
これを瞬時に察知したピットブルが圧力をかけてくる。ピットブルが飛び膝蹴りを見舞うタイミングで足を掴んでタックルに入る川尻だが、タックルの入りがやや浅く、上になったピットブルが打撃を打つ。
川尻は掴んだピットブルに片足を離さずにマウントに持っていこうとするが、パワーでも上回るピットブルはもろともせずパウンドを撃ち続ける。
ピットブルの激しい鉄槌を何度も食らったところでレフェリーが試合を止めた。
負けていく川尻達也を見るファンの心境
川尻達也の格闘技人生にはこれまで何度もチャンスが転がってきた。
PRIDEでは五味隆典との激闘、DREAMでは青木真也とのライト級タイトル戦、K-1のカリスマ魔裟斗との異種格闘技戦、STRIKEFORCEでのタイトル戦、UFC参戦。
いずれも全て敗北を喫しているが川尻は挑戦し続けた。プロとして15年も現役を続ける選手は少ない。
川尻は挑戦し、失敗し、それでも挑戦し続ける理由はファンの為、そしてタイトルへの執念である。
今大会は自身の格闘技人生において最後のタイトル獲得のチャンスであったが、結果は1R完敗。Bellatorのレベルの高さもあるが、年齢による体力の衰えも見受けられる。
PRIDE時代から川尻を見てきた私としては20代頃の動きと比べるとその差は歴然だ。試合後のインタビューで自らの器について自分が1番わかっていると涙ながらに話していた。
川尻の全盛期を知っている我々ファンからすると、彼が圧倒的に負けていく姿には寂しさを感じる。
魔裟斗の様に最善の状態で引退できる選手は少ない。過去に名を広めた格闘家達もいつの間にかジム経営や選手指導にシフトしている。
あるいは賞味期限はとっくに過ぎているが、体に鞭打って消費期限ギリギリまで戦い続ける格闘家…。
その様な状況下でも戦場に立つ川尻達也の生き様には価値があると思う。価値の理由はまだ川尻を求めているファンがいるからだ。
(文・Totty)