2019年RIZINバンダム級は堀口恭二の絶対政権を朝倉海が崩し、年末は堀口が返還したベルトを海とケイプが争い、新チャンピオンにはケイプが輝いた。
その挑戦者決定戦を制した扇久保がケイプと対戦することが決まるなどストーリーは進み続ける。バンタム級はRIZINで最も濃い層だと言えるだろう。
そして、もう1人影の王者とも言われているこの男の参戦を我々は待っていた。男の名は金原正徳。
金原正徳のRIZIN参戦
金原正徳は戦国初代王者にしてUFCパフォーマンスオブザファイトを受賞。さらには日本人で唯一、山本KIDにMMA黒星をつけた実績もある。
2016年のUFCリリース後は国内に拠点を移し、今回は約1年ぶりのMMA復帰戦となった。RIZIN参戦の経緯について金原は自身のMMAキャリアとしても集大成、最後に彼が闘いたい相手がRIZINにいると語った。
金原の相手に抜擢されたのは現DEEPバンダム級王者のビクター・ヘンリーだ。師にジョシュ・バーネットを持ち、2019年RIZINに初参戦した。
巧みな寝技技術で一本勝ちを収め、外国人枠としてRIZINトップ前線に絡んできた。金原にとっては申し分のない相手。金原自身も自分のRIZINでの立ち位置がわかる試合であると語っていた。影の王者金原がRIZIN制圧に向けて動き出した。
金原正徳vsビクター・ヘンリーの試合展開
金原正徳の体つきからかなり仕上げてきたことが分かる。白髪に黄色のパンツ。RIZINのリングに金原がようやく来た。
静かな立ち上りの両者。スタンドで両者距離を図っている。金原の動きがやや堅いようにも見える。ジャブでビクターを牽制する金原。ビクターもパンチを時折見舞っていく。
バックステップで往なす金原。ベテランの風格が漂っている。そしてビクターからいとも簡単にテイクダウンを奪い、サイドポジションをとりに行こうする。ビクターも足を使って抵抗。
今度はマウントを取りに行こうとする金原をビクターが回避しようとする。結果、金原はビクターその背後に周り、バックをとった。
後方から金原がチョークを狙いにいく。打撃でビクターの意識を散らし、堅い足のクラッチでビクターを逃さない。ここで1R終了のゴング。
金原の安定した巧さが際立った。2R序盤ややプレッシャーをかけてきたビクターにテイクダウンを仕掛けるもここは切られてしまう。
ここで波乱が起きる。距離を詰めてきたビクターのショートレンジの右フックが顎に2発入ると金原が腰から崩れた! 追撃のパンチでレフェリーが試合を止めた。試合後呆然とする金原の表情が伺えた。
ビクター戦後に引退を口にした金原正徳
現実は厳しかった。1R主導権を握っていた金原の安定した強さを周囲も再認識したことであろう。金原の動きはブランクを感じさせるものではなかった。純粋にビクターの方が強かった。
金原は試合後の記者会見でこの試合に進退を懸けていたこと、そして自身の引退を口にした。我々ファンとしては彼のRIZINでの活躍を今後も期待しており、名残惜しくも感じる。
ビクターは正直かなりトップのファイターであった為にこれで金原の評価が落ちたとは考えにくい。しかしながら、金原が最後のターゲットとして見据えていた先はこんなところでつまづくものではなかったのだろう。
金原自身も今の自分がどこまで通用するのかを図っていた。結果的に敗北というシンプルな答えが出たことで彼はそれを1つの区切りとした。しかし、試合を見たいと思う観衆がいる限り、金原には格闘家であり続ける価値がまだまだ残っているのではないだろうか。
(文・Totty)