私が剣道を始めたきっかけは、大河ドラマのワンシーンだった。たまたまつけていたテレビに写っていた剣道の稽古をする姿。とてつもなくカッコよく見え、まさに雷に撃たれたような感覚に陥った。
中学生にあがったタイミングで、迷わず剣道部に入部を決めた。「カッコいい」ただそれだけの理由。剣道がどんなものなのか知らないまま入部したのだが、知れば知るほど奥の深い競技であることがわかり、魅力にハマっていった。
その魅力の一つが、個性を生かした戦い方が自分の武器になるところだ。
どんな相手とも戦えるように技を分析
剣道は、ボクシングや柔道などとは違い、階級制のない世界。体重が10kg違う相手と試合をすることだってある。体格の違う相手と刀を交えるということは、自分の長所を分析し、自分にしかできない戦い方を展開していくことが必要だ。
剣道に打ち込んでいた期間は、どんな体格の相手とも戦えるようさまざまな技を分析し、技を自分のものにしようと稽古に励んでいた。
例えば、「面」ひとつとってみても、振りかぶりの大きさや、間合い、竹刀の握り方、打つ強さが変わってくる。有効打撃部位は3か所(高校からは4か所)あるので、バリエーションを含めると技の種類は多い。
出小手のコツは相手の癖を見抜くこと
私の得意技は、出後手だ。相手が技を出そうとする瞬間に小手を狙う。ボクシングでいうカウンターとでもいえばよいだろうか。
相手の動きに反応できる瞬発力と相手の考えを読む力が試される。相手の息遣いや表情、足の運びを見ながら、フェイントをかけながらの攻防の末に決まる出小手は、なんともたまらない快感だ。
出小手は、自分の瞬発力に自信があるのならぜひ磨いておきたい技である。また、身長が低くても使える技でもある。
私は鍔迫り合いの状態から技を出すことが苦手で、出来ることなら遠い間合いから一本を取りたいと考えていた。また、瞬発力もそこそこの自信があったことから、この技を磨いてみようと思ったのだった。
この技のメリットは、遠い間合いから技を仕掛けることができ、自分が撃たれるリスクを減らしながらも攻撃することができる点である。得意技にすることができれば優位に試合を運ぶことができる。
出後手の練習では、徹底的に相手の動きを分析し、実践的な練習を繰り返して、打つタイミングを身体に覚えさせる。戦い方には必ず癖があるもので、技を出す前の足の動かし方、目の動き、呼吸の仕方が人によって違う。普段の稽古から人の癖を探す習慣をつけておけば、相手を見る目が養われる。
剣道では、竹刀の正しい部分が有効部位に当たっていなければ、有効打としてカウントされない。よって、狙ったタイミングで有効部位に打ちこむ練習を日頃から行う必要がある。
(文・ならきち)