高校でも剣道部に入り、初めは下位チームに属していましたが、あるとき顧問に呼ばれAチームに参加することになりました。
3年生の先輩を押し退けてのチーム入りだったので、緊張とは別に気まずさが少しありました。そのため、私はとても萎縮していました。
そして、不安とは裏腹に、レギュラーメンバーを任され、また、ポジションも大将という重役を担ってしまいました。
大将の自分が負けてチームは敗退
夏を目前としていた頃、3年生にとって最後となる大会が始まりました。チームは予選を勝ち上がり、県大会、関東大会へと出場することが決まりました。
人生で初めて大舞台にたつことになったのですが、大将の私が負けたことによりチームの敗退が決まってしましました。押し退けてしまった先輩に申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
高校剣道のレベルの高さに圧倒される
私たちのチームは敗退してしまったので、勝ち残ったチームの試合を観戦しました。私が今でもよく覚えているのはこの時に見た決勝戦です。
その試合は、お互いに無駄がなく、緊迫した試合でした。高校初めての関東大会で、レベルの差を見せつけられ、開いた口が塞がりませんでした。
剣道の団体戦は、先鋒、次鋒、中堅、副将、大将の5人で対戦する形式が主流です。私の心に残っている試合も、この形式の団体戦でした。
剣道は、時間内に一本又は、二本とった方が勝ちとなります。また、時間内に両者一本もとれなかった場合、その試合は引き分けとなります。先鋒より試合をしていき、勝った人数が多いチームが勝ちとなります。
更に、両者勝数が同じ場合、とった本数で競います。しかし、それもまた同じ場合、代表戦となり、両チームの代表者同士が戦います。
さて、この試合は、副将までが引き分けという混戦試合でした。両者一歩も譲らず、とても白熱した試合でした。中学を卒業して間もない私には、スピードや技、足さばきといったありとあらゆることがすばらしく思えました。
そして大将戦が始まりました。
会場内がとてもはりつめた空気でした。両者高校3年生で、今年が最後の関東大会でした。また、二人とも名の知れた選手で、個人戦では毎回上位にあがってくる二人でした。
両者一歩も譲らず、お互いにおしいところもありつつ、時間だけが流れていきました。あと1分くらいのときだったでしょうか。試合の勝敗が一気に決まった瞬間でした。
それは、お互い構えていて、中心の取り合いの中、同時に面を取りに行ったその一瞬です。赤の旗が一斉に上がりました。相討ち面で赤が一本をとったのです。
そのあとの残り時間、結局お互いに一本も取れず終わってしまったのです。その瞬間、赤のチームの優勝が決まったという試合でした。
大将戦のあるべき姿は
その試合がなぜ心に残っているのかというと、その試合の勝敗が、私が任された大将というポジションにより決まったからです。
中学生の時は、学校の剣道部自体が強くなかったので、なかなか大将で試合が決まるということはありませんでした。そのため、重大な責任を担うのだと改めて考えさせられ、その反面、もっともっと強くならなくちゃいけないと思いました。
また、二階の観客席にいる私が、試合会場の中にいるわけでも戦っているわけでもないのに、両者どちらもとても気迫に満ちていて、攻めの強い気持ち、そして、圧のようなものを感じたからです。
この時、未熟ながら私は、どんなに相手が攻めてこようとも崩れない、相手の技の空きを狙っているというような、一時も目が離すことのできないとても緊迫した試合を、そう、この決勝戦のような試合を自分でもしたいと思いました。
それからは、大将としてどういった試合をすればよいのか、相手との駆け引きや、強い気持ちを養うにはどうしたらよいのか、などととても考えるようになりました。
また、前で勝負が決まってしまっていれば自由に戦えますが、混戦の末、大将の私により勝敗が左右されてしまう場合、どう攻めたら良いのか、たくさん研究するようになりました。