バダハリvsエロール・ジマーマンの試合について紹介したい。
両者は2008年のK-1 World GP準決勝で対峙した。1回戦でレジェンドのピーターアーツをKOで仕留めたバダハリとレジェンド、フランシスコ・フィリオを師に持つテイシェイラに勝利したジマーマン。
バダハリは2006年K-1参戦以降、破天荒な言動とパフォーマンスでK-1に新たな旋風を巻き起こしていた。
2008年K-1 World GPに台頭したゴールデン世代
バダハリは1回戦でアーツを破り世代交代を起こし、チャンピオンの座まで残り2つとなった。ノーダメージで上がってきたバダハリだけに準決勝もKO決着で終わらせたいところだ。
対するジマーマンも同年K-1で頭角を表したバダハリ同様、若手のホープ。セームシュルトらを輩出したオランダの名門ゴールデングローリーに所属し、対戦相手の腕の骨や頭蓋骨を骨折させたことがあることからボーンクラッシャーという異名を持つほどの打撃力を持つ。
1回戦でテイシェイラとフルラウンドで戦ったジマーマンの方がやや体力的に不利と見られた。この2人の対決はK-1新時代の幕開けを予感させた。
バダハリvsエロール・ジマーマンの試合展開
1Rから蹴りを多用していくバダハリ。1回戦で見せたパンチメインのファイトスタイルとは異なっている。ジマーマンもパンチを放っていく。
互いに相手の様子を伺いながら自分の距離に持っていきたいところだ。パワーではジマーマン、スピードではバダハリだ。
開始2分のところでジマーマンの伸びる右ストレートがバダを捉えるがバダもこれに対応し左ストレートで応戦。バダハリが一気にラッシュをかけてジマーマンをコーナーに詰めた。
ジマーマンはしっかりとガードを固めブロックしている。打ち終わりのバダハリにパンチで応戦し始めたジマーマン。ここでバダハリは距離をとる。バダハリがまた蹴り出したところで1R終了。
打撃戦では互角の両者。2Rもバダハリがパンチをジマーマンに当てていく。スピードでやや上回り、リーチのあるバダハリが有利に試合のペースを掴んできた。
追うジマーマンの飛び蹴りを難なく交わし、強烈なハイキックをジマーマンのガードの上から叩き込む。試合の主導権がバダハリになってきたと感じさせたのもつかの間、バックステップでアッパーを合わせたバダハリにジマーマンの伸びる右ストレートが炸裂!
意識が飛んだ様子のバダハリが腰から崩れ落ちた。面食らったかっこうのバダハリが息を整えて9カウントで立ち上がった。
2ノックダウンシステムの為、バダハリはもう一度ダウンすると負けてしまう。
それでもバダハリが前に出始め、インボクシングでジマーマンをコーナーに押し込む。パワーのあるジマーマンの反撃も肩で往なしている。バダハリのジャブもコツコツと当たってきた。ジマーマンは疲労か、効いているのか若干手数が減ってきた。
そして2R終了残り10秒。ジマーマンにカウンターの右ストレートでバダハリがダウンを奪い返した。会場は大きな興奮に包まれた。互いにダウン1:1となった。そして、最終ラウンドに突入。
バダハリが左ジャブをジマーマンに見舞う。ジマーマンは鼻から出血も見られる。ジマーマンはローのカウンターで倒れるもこれはスリップとみなされる。ジマーマンも飛び込みのフックでバダハリを後退させる。
中距離でジマーマンがフックを見舞ったところにバダハリの右ストレートが入った。前のめりに倒れたジマーマン。立つことができず、ゴールデン世代の試合をバダハリが制した。
K-1が再びエキサイティングな舞台に
バダハリvsエロール・ジマーマンは新世代の格闘家による時代の変革を表した試合展開であった。それ以前、長く続くセームシュルト絶対政権下にあったK-1には退屈の声も上がっていた。
そんな中でバダハリ、ジマーマンが魅せた試合は創世記K-1を彷彿させるかの様なエキサイティングな試合であった。
バダハリの素質が輝いた瞬間、まさにゴールデンボーイを体感させられた。
(文・Totty)