大学入学時に、大学にボクシング部があったことがきっかけでボクシングを始めた。もともとボクシングを観ることが好きだったため、ボクシング部に入部するのは自然な流れであった。
やるからには腰を据えて取り組もうと考えた私は、部活と並行して、プロのボクシングジムに通い始め、朝はロードワーク、昼は大学で練習、夜はジムで練習という毎日を送っていた。
結果として、国体地区予選で準優勝するなど、大学から始めた選手としてはそこそこの実績を残せた。ボクシングジムでは、相手にダメージを与えるための実用的なテクニックを教わったが、その中で最も私に適していたのが左ボディブローであった。
一撃必殺を狙える左ボディブロー
私の戦績は23戦15勝(8KO/TKO)8敗で、8つのKOのうち実に6つが左ボディブローによるKO勝ちであった。
左ボディブローの魅力は何といっても一撃必殺の技であるということである。左ボディブローは相手の肝臓の部分を打ち抜くパンチであり、タイミングよく正確な位置をたたけば相手を一撃で倒すことができる。
人間の急所はいくつかある。例えば頭部で言えば顎であり、腹部で言えば肝臓(右の脇腹)とみぞおちである。顎を打ち抜かれてのノックアウトは、意識が飛ぶために痛みを感じることは少ない一方、肝臓を打たれてのノックアウトは、意識がある中で大変な痛みを味わうことになり、その時の苦しみは筆舌しがたいものがある。
顎よりも当てやすい肝臓
頭部の弱点である顎を打ち抜いて相手をKOするのは、実はとても難しい。なぜなら、顎は弱点である面積が小さく、かつ体を揺らす動きをすると的が大きく動くため、正確な位置を打ち抜くのが難しいからだ。
一方、肝臓の部分は体を揺らす動きをしても大きく動くことはなく、かつ弱点となる面積が顎と比べて大きいため、決めるのが比較的容易である。
左ボディブローを当てるコツ
具体的にどのような打ち方をするかというと、左のアッパーカットを相手の右わき腹に刺すようにして打つ。
途中までのフォームは顔面への左アッパーカット、左フックと同じであるため、顔面へのアッパーカット、左フックを事前に見せておくことで、相手に自動的に3択を迫ることができる。
古くはメキシコの名選手であるフリオ・セサール・チャベス、最近の選手で言えば井上尚弥などが得意としているパンチでもある。正しいフォームで打てるように反復練習をして、正確に相手の肝臓を打ち抜くことができれば大きな武器となる。
コンビネーションブローの中に組み入れる
メリットばかりを書いたが、デメリットもある。パンチを打つ際に左アッパーカットの要領で打つため、一瞬頭部のガードが開くというデメリットがある。
ゆえに、左ボディブローばかりを狙うと、相手に動きを読まれて逆に自らを危険にさらしてしまうことになる。
左ボディブローを狙っていることが分かりづらいようにする、または狙っていることが分かっても対応しづらくするためには、単発で打たないようにすることが必要である。
例えば、コンビネーションブローの中に組み入れると、左ボディブローに対する相手の対応が難しくなるので、ガードが開きやすいという左ボディブローの弱点を補うことができる。
私が得意としていたのは、ワンツー→左ボディブローというコンビネーションである。試合の序盤でワンツーやワンツーから顔面への左フックを出しておくと、相手の意識は顔面を守ることに集中し始める。
そうして頃合いを見てワンツーから左ボディブローへとつなぐのである。
ジャブ・右ストレート・ワンツーなどを習得し終えたボクシング中級者の方は、是非ともこの左ボディブローを習得することをお勧めしたい。
(文・amabox10)